本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ～side story ～

亮平 27

　俺はあの時、鈴音に言ってしまった言葉を今でもずっと後悔している……。
あんな事さえ言わなければ鈴音は川口とは付き合う事は無かったのではないだろうかと――



あの夜、俺と川口をその場に残して鈴音は逃げるように去って行った。男2人、その場に残されて何とも気まずい空気がその場を流れていた。俺も川口も一言も言葉を発せず、互いを睨み合っている。

が……不意に川口は視線を逸らせ、自虐的に笑った。

「ハハハ……駄目元で告白してみたけど、やっぱり振られたか……」

「言っただろう？　鈴音はお前になんか興味無いって」

だからさっさと鈴音から手を引けよ。

「……」

その言葉に川口は険しい目で俺を見た。

「そう言うお前だって、幼馴染のくせに彼女の眼中には入っていないようだけど？　それなのに何故彼女に構うんだ？　お前は加藤さんのお姉さんと恋人同士なんだろう？　加藤さんに構っていないで恋人の処へ行った方がいいんじゃないか？」

何でこいつにそんな事言われなくちゃならないんだ？

「うるさい……お前には何も関係ないだろう？」

「いや、あるね。たかが幼馴染と言うだけで加藤さんに乱暴な態度を取って……さっきだって彼女の腕をねじ上げただろう？　おまけに何でもかんでも上から目線。俺から言わせるとお前が加藤さんにしている事はDVやモラハラと何ら変わらない様に見える」

「な……っ！」

何がDVだっ！　モラハラだっ！　俺は鈴音の為を思って……っ！

けれどよくよく考えてみれば確かに川口の言う通り俺のしていることはDVやモラハラと何ら変わりないかもしれない。思わず黙り込んでしまう。

「俺なら、お前の様に絶対に彼女を傷つけるような事はしない。大切にすると誓えるさ。何故ならここまで本気で好きになった女性は加藤さんが初めてだからな」

「な、何だってっ！？」

こ、こいつ……この俺の前で堂々と鈴音の事を好きだと言いやがった！　気付けば俺は自分よりも背の高い川口の襟首を捕まえていた。川口は動じることなく涼しい目で俺を見下ろす。

「ほら。お前はすぐにそうやって暴力的な行動に出るんだな。だから平気で加藤さんにも酷い事をするし、全くその自覚も持てないんだろう？」

「！」

川口に指摘され、俺はその時初めて気が付いた。……俺はもしかして最低な男なのかもしれない……。

「……悪かった。つい……」

川口の襟首から手を離すと、後ろへ数歩下がった。

「とにかく……俺は加藤さんを諦める気はないから。傍にいられるなら友人でも構わないと思っている」

それだけ言うと川口は俺に背を向け自分のマンションへと戻って行った。

「……アイツ、本気で鈴音の事が好きなのか……」

鈴音が誰か他の男と恋人同士になるとは考えたくもないが……川口ならまぁいいか。

ここはひとつ鈴音に川口を勧めてみるか？　俺が鈴音に恋人候補に川口を勧める事によって、ひょっとすると鈴音は逆に男として俺に興味を持つかもしれないからないな……。

そういう打算的な気持ちで鈴音に言った言葉のせいで、本当に鈴音が川口と交際する事になるとは……あの時の俺は夢にも思わなかった――