本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 38
「だからって、はいそうですかってあっさりその社長令嬢と婚約したのかよ? やっぱりお前は最低な奴だなっ!」
「だから違うって言ってるだろうっ!」
川口も大声で俺に怒鳴り返す。俺達の怒鳴り声に店内は一瞬シンと静まり返る。
「あ……」
川口は青ざめた顔で咄嗟に俯く呟いた。
「何処かで見張られているかも知れないって言うのに……俺は……」
その呟きを聞き逃さなかった。
「おい、見張られてるかもしれないって……」
すると川口は顔を上げる。
「俺は本当に婚約するつもりなんか無かった。だって鈴音がいるのに、どうして他の女と結婚できるって言うんだ? 俺がこの世で好きな女性は鈴音だけなのに」
「川口……」
その様子から分った。川口は本気で鈴音が好きなんだと。だが……俺だって……! 思わず下唇を噛んだ。
「なのに彼女と社長は言ったんだ。社員を路頭に迷わせてもいいのかって。父は俺に土下座してきたんだよ。頼むから言う通りにして欲しいって。俺は今まで会社に見向きもしなかった。負い目があったから……仕方なしに婚約したんだよ」
「だからって……いきなり連絡を絶ったり、黙って部屋から消えるような真似許されると思っているのかっ!?」
俺の言葉に川口は反応した。
「え……? あんたも部屋に……行ったのか?」
「ああ、俺と鈴音の2人でな。鈴音はお前の部屋の合鍵を持っていたから。開けてみたらびっくりだ。部屋の中が空っぽなんだからな。それを目にした時……可哀相に、鈴音は気を失ったんだぞ?」
「そ、そんな……!」
川口は頭を抱えて震えている。……ひょっとして泣いているのか?
「川口、お前これからどうするんだよ? 本当に鈴音をあのままにしておくつもりか?」
「会いたくても……声を聞きたくても出来ないって言ってるだろう? 俺は見張られているんだよ。彼女が雇った興信所の人間に」
俺はその言葉に耳を疑った。
「……嘘だろう?」
「こんな話。ウソつけるはずないだろう? 俺は今、婚約者に毎晩会っているんだ。それも条件に入っていたからね。そして彼女は俺が今日1日とっていた行動をスマホを見ながら読み上げるんだよ。恐らく興信所から届いた俺に関する報告書か何かが送られてきているんじゃないのか?」
何て事だ……。
「お前……その女の事どう思っているんだ?」
試しに尋ねてみる事にした。
「……酷い女だと思っているよ。だけどもう合併の話は決まってしまった。どうしようも無いんだ。近々、俺と彼女の婚約発表が世間で公表されるんじゃないかな?」
きっと……この結婚は川口にとって地獄になるのだろうな……。そう思うと、俺は目の前の川口が気の毒に思えた。
「なぁ……本当に鈴音には黙っていなくなるつもりなのかよ」
「いや……一応鈴音には俺のマンションに別れのメッセージを残しておいた。きっと鈴音なら見つけてくれると思う。俺はそう信じる」
「そうか……」
俺は返事をしながら鈴音の事を思った。
鈴音も川口も本当にお互いのことを愛し合っていると言う事が分った。俺なんかが間に入れない程に……。
川口は完全に鈴音を諦めようとしている。俺は鈴音が好きだから川口と別れるのは賛成だ。だがその一方で鈴音とは本当に好きな男と結ばれて欲しいと思っているのも事実だ。
そこで俺は思った。
鈴音に対する恋心を一旦封印し、川口と鈴音の恋を成就させる為に介入しよう――と。
「だから違うって言ってるだろうっ!」
川口も大声で俺に怒鳴り返す。俺達の怒鳴り声に店内は一瞬シンと静まり返る。
「あ……」
川口は青ざめた顔で咄嗟に俯く呟いた。
「何処かで見張られているかも知れないって言うのに……俺は……」
その呟きを聞き逃さなかった。
「おい、見張られてるかもしれないって……」
すると川口は顔を上げる。
「俺は本当に婚約するつもりなんか無かった。だって鈴音がいるのに、どうして他の女と結婚できるって言うんだ? 俺がこの世で好きな女性は鈴音だけなのに」
「川口……」
その様子から分った。川口は本気で鈴音が好きなんだと。だが……俺だって……! 思わず下唇を噛んだ。
「なのに彼女と社長は言ったんだ。社員を路頭に迷わせてもいいのかって。父は俺に土下座してきたんだよ。頼むから言う通りにして欲しいって。俺は今まで会社に見向きもしなかった。負い目があったから……仕方なしに婚約したんだよ」
「だからって……いきなり連絡を絶ったり、黙って部屋から消えるような真似許されると思っているのかっ!?」
俺の言葉に川口は反応した。
「え……? あんたも部屋に……行ったのか?」
「ああ、俺と鈴音の2人でな。鈴音はお前の部屋の合鍵を持っていたから。開けてみたらびっくりだ。部屋の中が空っぽなんだからな。それを目にした時……可哀相に、鈴音は気を失ったんだぞ?」
「そ、そんな……!」
川口は頭を抱えて震えている。……ひょっとして泣いているのか?
「川口、お前これからどうするんだよ? 本当に鈴音をあのままにしておくつもりか?」
「会いたくても……声を聞きたくても出来ないって言ってるだろう? 俺は見張られているんだよ。彼女が雇った興信所の人間に」
俺はその言葉に耳を疑った。
「……嘘だろう?」
「こんな話。ウソつけるはずないだろう? 俺は今、婚約者に毎晩会っているんだ。それも条件に入っていたからね。そして彼女は俺が今日1日とっていた行動をスマホを見ながら読み上げるんだよ。恐らく興信所から届いた俺に関する報告書か何かが送られてきているんじゃないのか?」
何て事だ……。
「お前……その女の事どう思っているんだ?」
試しに尋ねてみる事にした。
「……酷い女だと思っているよ。だけどもう合併の話は決まってしまった。どうしようも無いんだ。近々、俺と彼女の婚約発表が世間で公表されるんじゃないかな?」
きっと……この結婚は川口にとって地獄になるのだろうな……。そう思うと、俺は目の前の川口が気の毒に思えた。
「なぁ……本当に鈴音には黙っていなくなるつもりなのかよ」
「いや……一応鈴音には俺のマンションに別れのメッセージを残しておいた。きっと鈴音なら見つけてくれると思う。俺はそう信じる」
「そうか……」
俺は返事をしながら鈴音の事を思った。
鈴音も川口も本当にお互いのことを愛し合っていると言う事が分った。俺なんかが間に入れない程に……。
川口は完全に鈴音を諦めようとしている。俺は鈴音が好きだから川口と別れるのは賛成だ。だがその一方で鈴音とは本当に好きな男と結ばれて欲しいと思っているのも事実だ。
そこで俺は思った。
鈴音に対する恋心を一旦封印し、川口と鈴音の恋を成就させる為に介入しよう――と。