本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 39
「お前に一つ確認したい事があるんだけど……」
コーヒーカップを握りしめながら俺は川口に尋ねた。
「何だ?」
「婚約者の女とは……もう寝たのか?」
すると川口は即答した。
「まさか!そんなはずは無いだろう!?」
「そんなはずはって……仮にも婚約者なんだろう?」
「深い仲どころかキスだってしたこと無いし、自分から手だって繋いだことは無いさ。恐らく結婚したって……触れる事は出来ないだろうな」
川口ははっきり言い切った。
「マジかよ……」
そんなの相手の女は耐えられるのだろうか? 何しろ女の方は川口にベタ惚れしているっていうのに。ひょっとすると川口は……。
「お前、ひょっとするとその女に愛想つかされたいんじゃないのか?」
「当然だろう? だけどこの間言われたよ。どうしてキスどころか手も握ってくれないんだって。もしこれ以上拒絶するなら合併の話は無効にするって。社員が路頭に迷う事になってもいいんだなって脅されたよ」
「脅迫されてるのか……?」
相手の女の執着心を知って、心底恐ろしく感じた。
「だから俺は言ったんだ。けじめをつけたいって。結婚するまではそういう関係は無しにしてくれって。……そうしたらようやく納得してくれたよ。だけど、俺はまだ鈴音の事が忘れられない……」
川口は頭を押さえて俯いた。
「……」
聞けば聞くほどに気がめいって来る話ばかりだ。川口は俺にとって憎い恋敵でもある。この男に手なんか貸してやりたくない。けれど鈴音は川口に惚れている。今は鈴音に笑顔でいて欲しい気持ちの方が勝っていた。
「……諦めるなよ。川口」
「え?」
「何とか川口家電に融資して貰えないか上と掛け合ってみる。だからお前も会社を立て直す方法を考えてみろよ。婚約者には反抗的な態度はとらない方がいい。従順なふりをして……出来れば手懐けてみろよ」
「手懐ける? 冗談じゃない! 俺にはそんな真似……!」
「鈴音と!」
俺は声を荒げた。
「え……?」
「お前、鈴音と……やり直したくはないのかよ……」
すると川口がポツリと言った。
「……やり直したい。俺が愛しているのは鈴音ただ一人だ。他の誰でもない」
「そうか。なら諦めるな。お前とあの女は婚約はしたかもしれないが、結婚はまだだしていないのだから、何とかなるかもしれないぞ。それじゃ……俺はそろそろ行くから」
俺はコーヒー飲み終えるとテーブルの上に置いた。
「帰るのか?」
「ああ、俺はこれから鈴音に連絡入れなくちゃいけないからな」
「え!?」
川口は驚きの顔で俺を見る。
「安心しろ。お前とは連絡取れなかったって言うつもりだから。俺はこれから鈴音には悪いが嘘をつき続けるつもりだ」
「嘘をつく……?」
「ああ、そうだ。今のお前の状況を何とか打破しないといけない。これから俺達は定期的に連絡を取り合う必要があるって事を忘れるなよ。そして俺は何食わぬ顔で鈴音と会う。鈴音の口からお前の事が飛び出して来ても……お前の事は口を堅く閉ざすつもりだ。もし俺がお前と会っている事が鈴音の耳に入れば、絶対に会いたがるだろう? 監視されているお前にさ」
「……確かに……」
「とにかく諦めるな。希望を持てよ」
言いながら俺の胸はズキズキと痛んでいた。畜生……何故俺は恋敵に手を貸そうとしてるんだ? 俺は元来、お人よしな人間じゃ無かっただろう?
「すまない……」
「別にお前の為じゃないから気にするな。それじゃあな。あ、コーヒー代は頼んだぞ」
れだけ言い残すと席を立ち、川口を残して店を出た。
駅へ向かいながら自分に言い聞かせた。
そう。これは川口に協力する為なんかじゃない。全ては鈴音の為なんだ――と。
コーヒーカップを握りしめながら俺は川口に尋ねた。
「何だ?」
「婚約者の女とは……もう寝たのか?」
すると川口は即答した。
「まさか!そんなはずは無いだろう!?」
「そんなはずはって……仮にも婚約者なんだろう?」
「深い仲どころかキスだってしたこと無いし、自分から手だって繋いだことは無いさ。恐らく結婚したって……触れる事は出来ないだろうな」
川口ははっきり言い切った。
「マジかよ……」
そんなの相手の女は耐えられるのだろうか? 何しろ女の方は川口にベタ惚れしているっていうのに。ひょっとすると川口は……。
「お前、ひょっとするとその女に愛想つかされたいんじゃないのか?」
「当然だろう? だけどこの間言われたよ。どうしてキスどころか手も握ってくれないんだって。もしこれ以上拒絶するなら合併の話は無効にするって。社員が路頭に迷う事になってもいいんだなって脅されたよ」
「脅迫されてるのか……?」
相手の女の執着心を知って、心底恐ろしく感じた。
「だから俺は言ったんだ。けじめをつけたいって。結婚するまではそういう関係は無しにしてくれって。……そうしたらようやく納得してくれたよ。だけど、俺はまだ鈴音の事が忘れられない……」
川口は頭を押さえて俯いた。
「……」
聞けば聞くほどに気がめいって来る話ばかりだ。川口は俺にとって憎い恋敵でもある。この男に手なんか貸してやりたくない。けれど鈴音は川口に惚れている。今は鈴音に笑顔でいて欲しい気持ちの方が勝っていた。
「……諦めるなよ。川口」
「え?」
「何とか川口家電に融資して貰えないか上と掛け合ってみる。だからお前も会社を立て直す方法を考えてみろよ。婚約者には反抗的な態度はとらない方がいい。従順なふりをして……出来れば手懐けてみろよ」
「手懐ける? 冗談じゃない! 俺にはそんな真似……!」
「鈴音と!」
俺は声を荒げた。
「え……?」
「お前、鈴音と……やり直したくはないのかよ……」
すると川口がポツリと言った。
「……やり直したい。俺が愛しているのは鈴音ただ一人だ。他の誰でもない」
「そうか。なら諦めるな。お前とあの女は婚約はしたかもしれないが、結婚はまだだしていないのだから、何とかなるかもしれないぞ。それじゃ……俺はそろそろ行くから」
俺はコーヒー飲み終えるとテーブルの上に置いた。
「帰るのか?」
「ああ、俺はこれから鈴音に連絡入れなくちゃいけないからな」
「え!?」
川口は驚きの顔で俺を見る。
「安心しろ。お前とは連絡取れなかったって言うつもりだから。俺はこれから鈴音には悪いが嘘をつき続けるつもりだ」
「嘘をつく……?」
「ああ、そうだ。今のお前の状況を何とか打破しないといけない。これから俺達は定期的に連絡を取り合う必要があるって事を忘れるなよ。そして俺は何食わぬ顔で鈴音と会う。鈴音の口からお前の事が飛び出して来ても……お前の事は口を堅く閉ざすつもりだ。もし俺がお前と会っている事が鈴音の耳に入れば、絶対に会いたがるだろう? 監視されているお前にさ」
「……確かに……」
「とにかく諦めるな。希望を持てよ」
言いながら俺の胸はズキズキと痛んでいた。畜生……何故俺は恋敵に手を貸そうとしてるんだ? 俺は元来、お人よしな人間じゃ無かっただろう?
「すまない……」
「別にお前の為じゃないから気にするな。それじゃあな。あ、コーヒー代は頼んだぞ」
れだけ言い残すと席を立ち、川口を残して店を出た。
駅へ向かいながら自分に言い聞かせた。
そう。これは川口に協力する為なんかじゃない。全ては鈴音の為なんだ――と。