本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 41
あれから時が少し経過し、鈴音の引っ越しが終わった後に俺は川口に連絡を入れた。
『え……? 鈴音が引っ越した……?』
川口の声に戸惑いがあった。
「当たり前だろう? お前と鈴音は恋人同士だったんだから。お前が住んでいたマンションの隣にいつまでも住み続けられるはずがないだろう? 俺は鈴音が引っ越ししてくれて本当に良かったと思ってる。今度のマンションには鈴音の大好きな風呂もついているしな」
『ひょっとして……鈴音の新しいマンションに行ってるのか?』
「何だよ? お前、ひょっとして俺に妬いているのか?」
一度でいいから川口にこの台詞を言ってみたかった。俺はちょっとした優越感に浸った。
『……』
しかし川口は俺の質問に答えない。
「ああ、そうだよな。お前は鈴音を捨てたんだから……何も言う資格はないからな」
『そうだよ……俺は酷い男だよ。恋人を捨てて……好きでもない女性と結婚しようとしているんだからな』
結婚……その言葉に引っかかる。
「おい、お前まさか鈴音のことはもう諦めるつもりなのか? 何の為に俺と連絡取り合っているか分かっているのか?」
『分かってるさ。だけど未だに打開策が見つからない。俺は陰で監視されているし、最近は彼女と会う時間も増やされて……本当に気がめいってくる……』
ため息交じりに言う川口に苛立ちが募ってきた。
こいつ……自分だけが辛い目に遭っていると思っているのか? 鈴音の事は完全に諦めるつもりなのか? 尤もこのまま川口と鈴音が別れるのが俺にとっては一番望ましい事だ。けれど鈴音はどうなんだ? 鈴音は未だに失恋のショックから立ち直れず、ますます元気が無くなっていく。それだけじゃない。一番の問題は……!
「川口……本当はこの事、黙っていようと思ったけど気が変わった。いいか? 良く聞けよ。お前の婚約者はなぁ……鈴音に会いに行ってるんだぞ? その事お前は知ってるのかよっ!」
『な、何だって……!?』
川口の声が震えている。
「そうか、やっぱりお前は何も聞かされていないんだな」
『一体彼女は鈴音に何をしたんだっ!? 頼む、教えてくれっ!』
かなり焦った様子の川口。
「この話は俺が直接この目で見たことじゃない……鈴音に聞いたんだよ。お前の婚約者が鈴音の仕事帰りに待ち伏せしてカフェに連れて行かれたらしい。そしてお前のマンションの合鍵を返せって言ってきたそうだ。……手切れ金の100万を携えてな。可哀相に……鈴音の奴、泣きながらその話を俺にしたんだ。流石にその時は演技を通り越して本気でお前とお前の婚約者に激しい憎しみを抱いたよ。俺がお前や婚約者の悪口を言っても、鈴音の奴は最後までお前をかばっていたけどな」
『そ、そんな…!』
「いいのかよ……お前、まだ鈴音の事が好きなんだろう?」
『ああ……当然だ』
「自分の好きな女が心無い言葉で傷つけられ、その女を傷つけた奴と結婚出来るのか?」
『…‥…無理だ。俺にはそんな真似は出来ない』
少しの沈黙の後、川口が言った。
「だったら……どうする?」
『例え鈴音とやり直せないとしても、今の婚約者と結婚する事は出来ない。出来るはずがない。鈴音を傷つける女との結婚なんて無理だ』
「そうか、なら別れるんだな?」
『当然だ。もう一度方法を探してみる。会社を潰さず、常盤商事と手を切る方法を……』
「ああ、そうだな」
この日、川口はようやく覚悟を決めたようだった――
『え……? 鈴音が引っ越した……?』
川口の声に戸惑いがあった。
「当たり前だろう? お前と鈴音は恋人同士だったんだから。お前が住んでいたマンションの隣にいつまでも住み続けられるはずがないだろう? 俺は鈴音が引っ越ししてくれて本当に良かったと思ってる。今度のマンションには鈴音の大好きな風呂もついているしな」
『ひょっとして……鈴音の新しいマンションに行ってるのか?』
「何だよ? お前、ひょっとして俺に妬いているのか?」
一度でいいから川口にこの台詞を言ってみたかった。俺はちょっとした優越感に浸った。
『……』
しかし川口は俺の質問に答えない。
「ああ、そうだよな。お前は鈴音を捨てたんだから……何も言う資格はないからな」
『そうだよ……俺は酷い男だよ。恋人を捨てて……好きでもない女性と結婚しようとしているんだからな』
結婚……その言葉に引っかかる。
「おい、お前まさか鈴音のことはもう諦めるつもりなのか? 何の為に俺と連絡取り合っているか分かっているのか?」
『分かってるさ。だけど未だに打開策が見つからない。俺は陰で監視されているし、最近は彼女と会う時間も増やされて……本当に気がめいってくる……』
ため息交じりに言う川口に苛立ちが募ってきた。
こいつ……自分だけが辛い目に遭っていると思っているのか? 鈴音の事は完全に諦めるつもりなのか? 尤もこのまま川口と鈴音が別れるのが俺にとっては一番望ましい事だ。けれど鈴音はどうなんだ? 鈴音は未だに失恋のショックから立ち直れず、ますます元気が無くなっていく。それだけじゃない。一番の問題は……!
「川口……本当はこの事、黙っていようと思ったけど気が変わった。いいか? 良く聞けよ。お前の婚約者はなぁ……鈴音に会いに行ってるんだぞ? その事お前は知ってるのかよっ!」
『な、何だって……!?』
川口の声が震えている。
「そうか、やっぱりお前は何も聞かされていないんだな」
『一体彼女は鈴音に何をしたんだっ!? 頼む、教えてくれっ!』
かなり焦った様子の川口。
「この話は俺が直接この目で見たことじゃない……鈴音に聞いたんだよ。お前の婚約者が鈴音の仕事帰りに待ち伏せしてカフェに連れて行かれたらしい。そしてお前のマンションの合鍵を返せって言ってきたそうだ。……手切れ金の100万を携えてな。可哀相に……鈴音の奴、泣きながらその話を俺にしたんだ。流石にその時は演技を通り越して本気でお前とお前の婚約者に激しい憎しみを抱いたよ。俺がお前や婚約者の悪口を言っても、鈴音の奴は最後までお前をかばっていたけどな」
『そ、そんな…!』
「いいのかよ……お前、まだ鈴音の事が好きなんだろう?」
『ああ……当然だ』
「自分の好きな女が心無い言葉で傷つけられ、その女を傷つけた奴と結婚出来るのか?」
『…‥…無理だ。俺にはそんな真似は出来ない』
少しの沈黙の後、川口が言った。
「だったら……どうする?」
『例え鈴音とやり直せないとしても、今の婚約者と結婚する事は出来ない。出来るはずがない。鈴音を傷つける女との結婚なんて無理だ』
「そうか、なら別れるんだな?」
『当然だ。もう一度方法を探してみる。会社を潰さず、常盤商事と手を切る方法を……』
「ああ、そうだな」
この日、川口はようやく覚悟を決めたようだった――