本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 42
外回りの最中――
俺は鈴音にメールを入れた。それはクリスマスイブに鈴音のマンションへ引っ越しの手伝いとクリスマスを2人で祝って以来だった。どうしても鈴音の様子が気になってしかたなかったからだ。
『鈴音、今夜お前のマンションへ寄っていいか? 2人で引っ越し祝しないか?』
手短にそれだけ打つと、メッセージを送信する。
「よし。これでいいか」
すると意外な事にすぐに俺のスマホに着信が入ってきた。
『うん、いいよ。何時頃になりそう?』
その返信の様子からは普段と変わりなく見えた。鈴音……少しは元気が戻って来たのだろうか? 俺は鈴音に電話をいれるべく、スマホをタップした――
『もしもし?』
鈴音はすぐに電話に出た。
「鈴音、今昼休みなんだろう? 電話大丈夫だよな?」
『うん、大丈夫だよ。亮平はお昼食べたの?』
「いや、これからなんだ。今外回りの最中なんだ。何か食べ物買って行くからお前は何も用意しなくていいからな? 多分19時位には行けると思うから」
『え? いいの? でも何か簡単なものくらい用意できるけど?』
鈴音……俺の為に食事を用意してくれるのか? 思わず胸が熱くなり……我に返った。駄目だ、俺は決めたはずだろう? 鈴音と川口が復縁できるように尽力しようと。
「でも鈴音だって仕事だろう? 無理しなくていいぞ?」
そうだ、俺なんかの為に無理するな。
『それじゃあさ、もし用意できそうなら何か準備しておくよ』
それでも鈴音は俺を気遣ってくれる。なら、少し位……その好意に甘えてみてもいいかもしれないな……。
「そうか、悪いな。でも本当に無理しなくていいからな?」
『うん。分かったよ』
「じゃあまた夜にな」
『またね』
俺は電話を切った後、ショーウィンドウに自分の姿が映っている事に気付いた。
情けないことに……俺の顔にはだらしなく笑みが浮かんでいた――
****
18時半――
仕事から直帰した俺は錦糸町駅に降り立った。このまま鈴音の会社まで迎えに行くか……。商店街を歩いていると鈴音の姿が目に入った。
「鈴音!」
人混みをかき分け、鈴音の元へ向かった。
「鈴音。偶然だな。まさか駅前で会うなんて」
その時、俺の目に不愉快な男が視界に入った。
「え? お前誰だ? 何で鈴音と……あ!」
「うん。同じ会社の井上君だよ」
鈴音に言われるまでも無く、俺はその人物を知っている。こいつ……また鈴音の周りをうろついているのか? 何所までも不愉快な男だ。鈴音は俺の苛立ちに気付く様子も無い。
「そうか、そう言えばそんな名前だったな」
言われる間もなく知っていたが、俺はあえて興味無さげに頷く。井上は明らかに不満そうな目で俺を見ていたので言ってやった。
「何だ? お前……まだ鈴音にまとわりついているのか?」
「だ、誰がまとわりつているって!?」
反論する井上に素早く鈴音が割って入ってきた。
「亮平、そんな言い方しないで。井上君とは駅まで一緒に帰ってきただけなんだから」
「加藤さん……」
井上が鈴音をじっと見つめる。その視線が不快で仕方なかった。
「鈴音、それじゃ行こうぜ」
俺はあいつを無視して、鈴音に声をかけた。
「うん。それじゃあね。井上君。また明日」
よりにもよって鈴音は井上に手を振った。馬鹿、よせよっ! むやみやたらに男に愛想を振りまくなっ! 喉まで出かかった言葉を俺は飲みこんだ。
「あ、ああ……またね」
未練ががましく鈴音に手を振る井上から鈴音を隠す様に前に立つと、一瞬井上は憎々し気に俺を睨み付け……駅へと消えて行った――
俺は鈴音にメールを入れた。それはクリスマスイブに鈴音のマンションへ引っ越しの手伝いとクリスマスを2人で祝って以来だった。どうしても鈴音の様子が気になってしかたなかったからだ。
『鈴音、今夜お前のマンションへ寄っていいか? 2人で引っ越し祝しないか?』
手短にそれだけ打つと、メッセージを送信する。
「よし。これでいいか」
すると意外な事にすぐに俺のスマホに着信が入ってきた。
『うん、いいよ。何時頃になりそう?』
その返信の様子からは普段と変わりなく見えた。鈴音……少しは元気が戻って来たのだろうか? 俺は鈴音に電話をいれるべく、スマホをタップした――
『もしもし?』
鈴音はすぐに電話に出た。
「鈴音、今昼休みなんだろう? 電話大丈夫だよな?」
『うん、大丈夫だよ。亮平はお昼食べたの?』
「いや、これからなんだ。今外回りの最中なんだ。何か食べ物買って行くからお前は何も用意しなくていいからな? 多分19時位には行けると思うから」
『え? いいの? でも何か簡単なものくらい用意できるけど?』
鈴音……俺の為に食事を用意してくれるのか? 思わず胸が熱くなり……我に返った。駄目だ、俺は決めたはずだろう? 鈴音と川口が復縁できるように尽力しようと。
「でも鈴音だって仕事だろう? 無理しなくていいぞ?」
そうだ、俺なんかの為に無理するな。
『それじゃあさ、もし用意できそうなら何か準備しておくよ』
それでも鈴音は俺を気遣ってくれる。なら、少し位……その好意に甘えてみてもいいかもしれないな……。
「そうか、悪いな。でも本当に無理しなくていいからな?」
『うん。分かったよ』
「じゃあまた夜にな」
『またね』
俺は電話を切った後、ショーウィンドウに自分の姿が映っている事に気付いた。
情けないことに……俺の顔にはだらしなく笑みが浮かんでいた――
****
18時半――
仕事から直帰した俺は錦糸町駅に降り立った。このまま鈴音の会社まで迎えに行くか……。商店街を歩いていると鈴音の姿が目に入った。
「鈴音!」
人混みをかき分け、鈴音の元へ向かった。
「鈴音。偶然だな。まさか駅前で会うなんて」
その時、俺の目に不愉快な男が視界に入った。
「え? お前誰だ? 何で鈴音と……あ!」
「うん。同じ会社の井上君だよ」
鈴音に言われるまでも無く、俺はその人物を知っている。こいつ……また鈴音の周りをうろついているのか? 何所までも不愉快な男だ。鈴音は俺の苛立ちに気付く様子も無い。
「そうか、そう言えばそんな名前だったな」
言われる間もなく知っていたが、俺はあえて興味無さげに頷く。井上は明らかに不満そうな目で俺を見ていたので言ってやった。
「何だ? お前……まだ鈴音にまとわりついているのか?」
「だ、誰がまとわりつているって!?」
反論する井上に素早く鈴音が割って入ってきた。
「亮平、そんな言い方しないで。井上君とは駅まで一緒に帰ってきただけなんだから」
「加藤さん……」
井上が鈴音をじっと見つめる。その視線が不快で仕方なかった。
「鈴音、それじゃ行こうぜ」
俺はあいつを無視して、鈴音に声をかけた。
「うん。それじゃあね。井上君。また明日」
よりにもよって鈴音は井上に手を振った。馬鹿、よせよっ! むやみやたらに男に愛想を振りまくなっ! 喉まで出かかった言葉を俺は飲みこんだ。
「あ、ああ……またね」
未練ががましく鈴音に手を振る井上から鈴音を隠す様に前に立つと、一瞬井上は憎々し気に俺を睨み付け……駅へと消えて行った――