本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 43
井上が去って行くのをじっと見ていると不意に鈴音が声をかけてきた。
「どうしたの亮平、行かないの?」
見下ろすと、鈴音が大きな目を見開いてじっと俺を見つめている。
「あ、ああ。行こうぜ」
俺達は2人で鈴音のマンションへ向かって歩きだした。そして少しの間俺は考える。もし、俺達が夫婦で一緒に新居へ帰る状況だったら、どんなにか幸せなのに……と――
鈴音の新居へ着くと、早速宅飲みする為の準備を始める。何気ない会話の中で俺は鈴音が孤独を感じていることに気が付いた。
「だから、俺とルームシェアしようかって言ったのに……」
思わずポツリと言って、気が付いた。でもそれはきっと無理な話だ。今の俺は鈴音を幼馴染としてではなく、完全に1人の女として見てしまっている。2人きりで一つ屋根の下に長い事一緒にいて……鈴音に手を出さないと言う自信が持てなかった。
多分、無理やり抱いてしまうだろう。鈴音が泣こうが、叫ぼうが……自分の思いを遂げてしまうに決まっている。
鈴音への気持ちを理性で押さえつけられそうにない程、鈴音への恋慕が募っていた。だが、俺はこれから先も鈴音に自分の気持ちを告げられないだろう。何故なら俺は川口と鈴音がよりを戻せるように協力すると決めたから。だから恋心は封印しなくちゃならないんだと自分に言い聞かせた。
「「カンパーイ」」
準備が終わり、俺と鈴音は2人きりの飲み会を始めた。
「鈴音、お前本当に痩せすぎだからちゃんと食べろよ。ほら、だし巻き卵好きだろう?」
だぶだぶの服を着ている鈴音を見ながら俺は皿の上にだし巻き卵を乗せて鈴音の前に置く。
「うん、ありがとう。自分で勝手に取るから、亮平も食べて。タコの唐揚げおいしそうだよ?」
酒を飲みながら2人でポツリポツリと年末年始の事について話し合った。話をしている内に驚きの事実を知った。鈴音は自分の事を完全に俺と忍の邪魔者だと思っていたのだ。
……どうしてそんな風に考えるんだ? 俺と忍はもう何でもないし、第一俺が本当に好きだったのは昔から鈴音だったのに。
川口と別れた直後の鈴音はそれは見ていて酷い有様だった。
だけど……少し、ほんの少しだけ鈴音は元気を取り戻してきている。
そう、それでいいんだ。俺がなんとかしてやるから、もう少しだけ待っていてくれ……。
俺は手にしていた缶チューハイをギュッと握りしめた――
****
22時半――
そろそろ帰る時間だ。これが恋人同士だったら部屋に泊まって、そして……2人でベッドに入って夜が明けるまで何度も何度も鈴音を……。
そんな流れになったかもしれないが、あいにく俺と鈴音はただの幼馴染でしかない。誰よりも長く一緒にいたのに、それ以上近づけない……踏み込むことが出来ない関係だ。
「それじゃ、そろそろ俺帰るな」
俺の言葉に鈴音が返す。
「うん、気をつけて帰ってね」
その思いやりの言葉に胸がグッと熱くなる。帰り際に少しだけ鈴音と会話をしていると、不意に鈴音が俯いた。……川口の事を思い出したのだろう。
「まぁ……元気出せよ。あいつとの事は縁が無かったって事だ。鈴音ならきっとまた別に相手が見つかるだろう」
俺は鈴音の手に頭を置き、そっと撫でながら言う。……本当はこのまま強く抱き寄せ、鈴音の顔を自分の胸に埋め込むように強く抱きしめたい気持ちを押さえ込みながら。
「だけど、亮平。私当分恋愛は…」
鈴音の顔が曇る。
やめろよ、鈴音。そんな顔をするのは……。
お前は何も知らないだろうけど、川口が愛しているのはお前だけなんだよ。あの婚約者の事を川口はこれっぽっちも何とも思っていないんだ。だから安心しろ。
そう言ってやりたい気持ちを押さえていると、不意にスマホに電話が鳴った。
電話の相手は川口からだった。……チッ! 全く……何て間が悪いんだ。俺は咄嗟に忍からの電話だと嘘をいい、鈴音に軽く挨拶をすると逃げるようにマンションを出た
玄関の扉が閉まると、足早に鈴音のマンションを離れながら文句を言った。
「おい! もう少し時間考えてから電話掛けてこいよ」
『何だ? まずい時間だったのか?』
戸惑い気味の川口の声が聞こえてくる。
「さっきまで鈴音のマンションにいたからな」
『何だって……!? 鈴音に手出ししていないだろうな?』
川口が嫉妬むき出しで話しかけてくる。それが何とも小気味良かった。
「そんなのお前に関係無いだろ?」
『な! 何だってっ!?』
「ば~か! 嘘に決まってるんだろう?」
『お前……からかってるのか? 俺の事』
「別にそんなんじゃないけどな。それで話って何だよ」
『ああ……ひょっとすると俺、婚約者と別れられるかもしれない』
その言葉に俺は息を飲んだ――
「どうしたの亮平、行かないの?」
見下ろすと、鈴音が大きな目を見開いてじっと俺を見つめている。
「あ、ああ。行こうぜ」
俺達は2人で鈴音のマンションへ向かって歩きだした。そして少しの間俺は考える。もし、俺達が夫婦で一緒に新居へ帰る状況だったら、どんなにか幸せなのに……と――
鈴音の新居へ着くと、早速宅飲みする為の準備を始める。何気ない会話の中で俺は鈴音が孤独を感じていることに気が付いた。
「だから、俺とルームシェアしようかって言ったのに……」
思わずポツリと言って、気が付いた。でもそれはきっと無理な話だ。今の俺は鈴音を幼馴染としてではなく、完全に1人の女として見てしまっている。2人きりで一つ屋根の下に長い事一緒にいて……鈴音に手を出さないと言う自信が持てなかった。
多分、無理やり抱いてしまうだろう。鈴音が泣こうが、叫ぼうが……自分の思いを遂げてしまうに決まっている。
鈴音への気持ちを理性で押さえつけられそうにない程、鈴音への恋慕が募っていた。だが、俺はこれから先も鈴音に自分の気持ちを告げられないだろう。何故なら俺は川口と鈴音がよりを戻せるように協力すると決めたから。だから恋心は封印しなくちゃならないんだと自分に言い聞かせた。
「「カンパーイ」」
準備が終わり、俺と鈴音は2人きりの飲み会を始めた。
「鈴音、お前本当に痩せすぎだからちゃんと食べろよ。ほら、だし巻き卵好きだろう?」
だぶだぶの服を着ている鈴音を見ながら俺は皿の上にだし巻き卵を乗せて鈴音の前に置く。
「うん、ありがとう。自分で勝手に取るから、亮平も食べて。タコの唐揚げおいしそうだよ?」
酒を飲みながら2人でポツリポツリと年末年始の事について話し合った。話をしている内に驚きの事実を知った。鈴音は自分の事を完全に俺と忍の邪魔者だと思っていたのだ。
……どうしてそんな風に考えるんだ? 俺と忍はもう何でもないし、第一俺が本当に好きだったのは昔から鈴音だったのに。
川口と別れた直後の鈴音はそれは見ていて酷い有様だった。
だけど……少し、ほんの少しだけ鈴音は元気を取り戻してきている。
そう、それでいいんだ。俺がなんとかしてやるから、もう少しだけ待っていてくれ……。
俺は手にしていた缶チューハイをギュッと握りしめた――
****
22時半――
そろそろ帰る時間だ。これが恋人同士だったら部屋に泊まって、そして……2人でベッドに入って夜が明けるまで何度も何度も鈴音を……。
そんな流れになったかもしれないが、あいにく俺と鈴音はただの幼馴染でしかない。誰よりも長く一緒にいたのに、それ以上近づけない……踏み込むことが出来ない関係だ。
「それじゃ、そろそろ俺帰るな」
俺の言葉に鈴音が返す。
「うん、気をつけて帰ってね」
その思いやりの言葉に胸がグッと熱くなる。帰り際に少しだけ鈴音と会話をしていると、不意に鈴音が俯いた。……川口の事を思い出したのだろう。
「まぁ……元気出せよ。あいつとの事は縁が無かったって事だ。鈴音ならきっとまた別に相手が見つかるだろう」
俺は鈴音の手に頭を置き、そっと撫でながら言う。……本当はこのまま強く抱き寄せ、鈴音の顔を自分の胸に埋め込むように強く抱きしめたい気持ちを押さえ込みながら。
「だけど、亮平。私当分恋愛は…」
鈴音の顔が曇る。
やめろよ、鈴音。そんな顔をするのは……。
お前は何も知らないだろうけど、川口が愛しているのはお前だけなんだよ。あの婚約者の事を川口はこれっぽっちも何とも思っていないんだ。だから安心しろ。
そう言ってやりたい気持ちを押さえていると、不意にスマホに電話が鳴った。
電話の相手は川口からだった。……チッ! 全く……何て間が悪いんだ。俺は咄嗟に忍からの電話だと嘘をいい、鈴音に軽く挨拶をすると逃げるようにマンションを出た
玄関の扉が閉まると、足早に鈴音のマンションを離れながら文句を言った。
「おい! もう少し時間考えてから電話掛けてこいよ」
『何だ? まずい時間だったのか?』
戸惑い気味の川口の声が聞こえてくる。
「さっきまで鈴音のマンションにいたからな」
『何だって……!? 鈴音に手出ししていないだろうな?』
川口が嫉妬むき出しで話しかけてくる。それが何とも小気味良かった。
「そんなのお前に関係無いだろ?」
『な! 何だってっ!?』
「ば~か! 嘘に決まってるんだろう?」
『お前……からかってるのか? 俺の事』
「別にそんなんじゃないけどな。それで話って何だよ」
『ああ……ひょっとすると俺、婚約者と別れられるかもしれない』
その言葉に俺は息を飲んだ――