本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 58
翌日――
やっぱりいくら待っていても鈴音から電話がかかって来る気配が無い。
「何だよっ! 折角暇なら連絡してきてもいいぞって言ったのに!」
腹立ちまぎれにベッドにスマホを投げつけた。そしてそのままゴロリと横になる。
「くそっ……川口の事があるから……俺から連絡は入れにくいって言うのに鈴音の奴め……」
そこでふと、嫌な予感が頭をよぎった。
「ま、まさか……あの太田って先輩と会っているのか……? それとも井上と……」
そう考えると、いてもたってもいられなくなった。
「鈴音……早まるなよっ!」
気付くと上着を掴んで部屋を飛び出していた――
****
何て偶然なんだろう。神なんて信じたことはなかったけれども、この時ばかりは祈りたい気持ちになってしまった。駅に着けば、俺の視線に鈴音の後ろ姿が飛び込んでくるなんて……! 髪の毛が短くなっていたけれども、俺が鈴音を見間違うはずは無い。
それにしても随分重そうな買い物をしてきたな。あんな細い身体じゃ荷物だって持つのは大変だろう。そこで俺は意気込んで声をかけた。
「鈴音!」
「えっ!?」
驚いてふり向く鈴音は髪が肩口まで切られていた。けれども、鈴音は美人だ。どんな髪型でも良く似合っている。鈴音は俺を見て、かなり驚いていた。その様子で思った。やっぱり鈴音は今日俺に連絡するつもりは全く無かったのだと。軽く失望した気持ちになりつつも、隣を歩く鈴音をじっと横目で見る。鈴音の隣は落ち着く。何といっても居心地がいい。そこで鈴音の笑顔が見たくなった。
「鈴音、髪切ったんだな」
「え?」
驚いたように俺を見る鈴音。
「うん、いいんじゃないか? 似合ってると思うぞ?」
なのに鈴音と来たら、喜ぶどころか奇妙な眼つきで俺を見てくる。
「……」
「何だよ、その呆けた顔は」
「あ。ううん。何だか意外だと思って」
「何が意外なんだよ?」
「亮平はあまりそういう事気に掛けないタイプだと思ったけど」
「あのな、昨日あったばかりなのに気付かないはずないだろう? お前俺が鈍い男だと思ってるのか?」
気付けよ、鈴音! 他の女だったら髪を切ろうが切るまいがどうでもいい。お前だから言うんだよ! 内心のイライラを押し殺す。
「う〜ん……別にそういう意味で言ったんじゃないけどな……」
「まぁ、いいや。それより急ぐぞ」
それよりも今はレジ袋が心配だった。
「何で?」
「レジ袋が重みで破けそうなんだよ、ほら急げ」
「え〜?」
何処か不満そうな鈴音の顔。だけどそんな表情でも鈴音はやっぱり綺麗だった――
****
その後は鈴音と2人でパンにヨーグルトを食べた後、お互いに好きな事をして過ごした。俺はスマホのアプリゲーム。洋画が好きな鈴音はPCでドラマを観ていた。
「……」
ゲームをしながら俺は鈴音の様子をチラリと伺った。丁度ドラマはラブシーンの真っ最中だった。鈴音はコーヒーを飲みながら、何を考えているのか分からないが、じっと画面を見つめている。……その様子に軽く失望した。普通男と2人きりの部屋で……ベッドシーンのあるドラマを観るなんてあり得るか?
これはつまり鈴音が俺の事を1人の男として全く認識していない証拠なんだろうな……。心の中でため息をつき、幼馴染という曖昧な関係を心の中で呪った――
****
17時になった。
「う〜ん……よし、そろそろ帰るか」
これ以上ここにいたら鈴音が夜の飯の事とか考えていらぬ気を回してしまうかもしれない。
「そう? 帰るんだね?」
玄関まで見送りに来てくれた鈴音が尋ねてきた。
「ねぇ、結局何しに来たわけ?」
その言葉に軽く傷つく。
「お前なぁ……折角俺が来てやったのにそんな言い方するのかよ?」
「だって、何で私のところに来たのか分からないんだもの」
鈴音ののんびりした口調を聞いていると、無性に悲しくなってきた。
「ほんとに分からないのかよ……」
こんなにも俺はお前が好きなのに……?
「え? だって亮平はお姉ちゃんの恋人でしょう? そして私はただの幼馴染。普通は恋人と過ごすものでしょう? お姉ちゃんの手前もあるし、もうやめなよ」
だから……! 俺は忍の恋人じゃ……!
気付けば俺は嘘をついていた。
「忍は知ってるよ。俺がここに来てること」
「え? そうなの?」
「ああ、そうだよ。鈴音は元気だったって伝えとくよ」
「うん、よろしくね」
もうこれ以上鈴音と話すのは限界だ。
「ああ、じゃあな」
そして俺は扉を閉めた。
気付けば……目には涙が滲んでいた――
やっぱりいくら待っていても鈴音から電話がかかって来る気配が無い。
「何だよっ! 折角暇なら連絡してきてもいいぞって言ったのに!」
腹立ちまぎれにベッドにスマホを投げつけた。そしてそのままゴロリと横になる。
「くそっ……川口の事があるから……俺から連絡は入れにくいって言うのに鈴音の奴め……」
そこでふと、嫌な予感が頭をよぎった。
「ま、まさか……あの太田って先輩と会っているのか……? それとも井上と……」
そう考えると、いてもたってもいられなくなった。
「鈴音……早まるなよっ!」
気付くと上着を掴んで部屋を飛び出していた――
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何て偶然なんだろう。神なんて信じたことはなかったけれども、この時ばかりは祈りたい気持ちになってしまった。駅に着けば、俺の視線に鈴音の後ろ姿が飛び込んでくるなんて……! 髪の毛が短くなっていたけれども、俺が鈴音を見間違うはずは無い。
それにしても随分重そうな買い物をしてきたな。あんな細い身体じゃ荷物だって持つのは大変だろう。そこで俺は意気込んで声をかけた。
「鈴音!」
「えっ!?」
驚いてふり向く鈴音は髪が肩口まで切られていた。けれども、鈴音は美人だ。どんな髪型でも良く似合っている。鈴音は俺を見て、かなり驚いていた。その様子で思った。やっぱり鈴音は今日俺に連絡するつもりは全く無かったのだと。軽く失望した気持ちになりつつも、隣を歩く鈴音をじっと横目で見る。鈴音の隣は落ち着く。何といっても居心地がいい。そこで鈴音の笑顔が見たくなった。
「鈴音、髪切ったんだな」
「え?」
驚いたように俺を見る鈴音。
「うん、いいんじゃないか? 似合ってると思うぞ?」
なのに鈴音と来たら、喜ぶどころか奇妙な眼つきで俺を見てくる。
「……」
「何だよ、その呆けた顔は」
「あ。ううん。何だか意外だと思って」
「何が意外なんだよ?」
「亮平はあまりそういう事気に掛けないタイプだと思ったけど」
「あのな、昨日あったばかりなのに気付かないはずないだろう? お前俺が鈍い男だと思ってるのか?」
気付けよ、鈴音! 他の女だったら髪を切ろうが切るまいがどうでもいい。お前だから言うんだよ! 内心のイライラを押し殺す。
「う〜ん……別にそういう意味で言ったんじゃないけどな……」
「まぁ、いいや。それより急ぐぞ」
それよりも今はレジ袋が心配だった。
「何で?」
「レジ袋が重みで破けそうなんだよ、ほら急げ」
「え〜?」
何処か不満そうな鈴音の顔。だけどそんな表情でも鈴音はやっぱり綺麗だった――
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その後は鈴音と2人でパンにヨーグルトを食べた後、お互いに好きな事をして過ごした。俺はスマホのアプリゲーム。洋画が好きな鈴音はPCでドラマを観ていた。
「……」
ゲームをしながら俺は鈴音の様子をチラリと伺った。丁度ドラマはラブシーンの真っ最中だった。鈴音はコーヒーを飲みながら、何を考えているのか分からないが、じっと画面を見つめている。……その様子に軽く失望した。普通男と2人きりの部屋で……ベッドシーンのあるドラマを観るなんてあり得るか?
これはつまり鈴音が俺の事を1人の男として全く認識していない証拠なんだろうな……。心の中でため息をつき、幼馴染という曖昧な関係を心の中で呪った――
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17時になった。
「う〜ん……よし、そろそろ帰るか」
これ以上ここにいたら鈴音が夜の飯の事とか考えていらぬ気を回してしまうかもしれない。
「そう? 帰るんだね?」
玄関まで見送りに来てくれた鈴音が尋ねてきた。
「ねぇ、結局何しに来たわけ?」
その言葉に軽く傷つく。
「お前なぁ……折角俺が来てやったのにそんな言い方するのかよ?」
「だって、何で私のところに来たのか分からないんだもの」
鈴音ののんびりした口調を聞いていると、無性に悲しくなってきた。
「ほんとに分からないのかよ……」
こんなにも俺はお前が好きなのに……?
「え? だって亮平はお姉ちゃんの恋人でしょう? そして私はただの幼馴染。普通は恋人と過ごすものでしょう? お姉ちゃんの手前もあるし、もうやめなよ」
だから……! 俺は忍の恋人じゃ……!
気付けば俺は嘘をついていた。
「忍は知ってるよ。俺がここに来てること」
「え? そうなの?」
「ああ、そうだよ。鈴音は元気だったって伝えとくよ」
「うん、よろしくね」
もうこれ以上鈴音と話すのは限界だ。
「ああ、じゃあな」
そして俺は扉を閉めた。
気付けば……目には涙が滲んでいた――