本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
※川口直人 1 (※この章から大人向けになります)
「……はっ」
ふと、まだ夜が明けきらぬ薄暗いホテルの部屋で目が覚めた。時計を見ると、時刻は4:40と表記されている
悪夢を見てうなされて目が覚めたのだ。鈴音と強引に引き離されてしまったあの時の悪夢を……。
「ゆ、夢か……」
思わず安堵のため息をついた時、傍らに温もりを感じて視線を移した。するとそこには愛しい鈴音が寄り添うように静かな寝息を立てて眠っている。薄暗い部屋に、鈴音の白い肌が浮かんで見える。
「鈴音……」
眠っている鈴音の柔らかな髪にそっと触れる。長いまつ毛に縁どられた鈴音の眠っている顔はとても美しかった。今、再び鈴音が傍にいてくれる……まるで夢の様に幸せだ。しかも今の俺と鈴音は恋人同士なんかじゃない。昨日、2人は結婚式を挙げて正式な夫婦となったのだから。
そして俺と鈴音は久しぶりに身体を重ねた。
何度も何度も互いの気持ちを確かめ合うかのように――
「鈴音……」
眠っている鈴音を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。柔らかく、甘い唇……鈴音の唇に触れることが出来るのは俺だけだ。
唇を重ねたまま、舌で鈴音の口をこじ開けて舌を絡めとる。
鈴音……愛してる……。
「……ん」
その時鈴音がパチリと目を開け、唇を離した。
「直人……さん……?」
まだ眠そうな瞳で俺を見ている。
「ごめん……起こしちゃったかな?」
鈴音の髪に触れると、彼女は笑みを浮かべる。
「ううん……大丈夫だよ……」
「愛してるよ。鈴音」
鈴音を抱き寄せ、耳元で愛を囁く。
「私も……直人さんの事、愛してる」
俺の首に腕を回して鈴音が恥ずかしそうに言う。そんな鈴音が愛しくてたまらない。
「鈴音……」
俺達はどちらともなく、口付けを交わす。少しの間、互いの唇をむさぼるように重ねていると、徐々に鈴音の身体が火照り始めた。
そのまま鈴音の身体にキスを落とし、柔らかな胸に顔をうずめ、淡く色づく先端を口に含んで舌を這わせる。
「あ……はぁっん……あぁ……な、直人さ……んんっ」
鈴音の口から甘い声が漏れ出し、肌がバラ色に染まっていく。
「鈴音……好きだ。愛してる……」
先端を吸い上げながら鈴音の、俺だけが触れて良い場所にそっと触れると、そこはもうすっかり潤っていた。
たったこれだけの愛撫でも俺を受け入れられるようになっている。それが本当に嬉しかった。
指を中に入れてみると、絡みついてくるようだ。
鈴音の甘い声がより一層大きくなる。
「あ……んんんっ……あぁぁぁ……」
もっと……もっと鈴音を感じさせたい。
俺だけにその甘い声を聞かせて欲しい。
身体をずらし、鈴音の足を広げて頭を埋めると敏感な部分を吸い、舌で舐めあげる。
「ああんっ! そ、そこ……だめぇ……変になっちゃうから……」
舌を這わせながら鈴音の様子を伺うと、目元に涙を浮かべて乱れている。鈴音は本当に綺麗だった。
鈴音と……一つになりたい。
身体を起こすと、鈴音の細い両足をかかえ……一気に中に挿し込んだ。
「あぁあんっ!!」
一際高い声で鳴く鈴音。どうやら達してしまったようだ。何て可愛らしいのだろう。
「鈴音……鈴音……好きだ。愛してる……」
「あぁあ……直人さ……わ、私も……愛し……あっあっあっあ……」
快感に身をよじりながらも、愛を告げようとしてくれる鈴音が本当に愛しくてたまらない。
鈴音の中は気持ちよく……俺は快感に酔いしれながら、再び自分の熱を放った。
早く新しい命が宿って欲しかったから。
俺と鈴音の愛の証の――
****
鈴音と初めて出会ったあの日の事は、決して忘れる事は無いだろう。
それは社会人になってまだ1年目のクリスマスイブの出来事だった――
俺は都内にある引っ越し会社の新入社員として働いていた。就職する時は父に猛反対された。なぜ会社を引き継がないのだと散々責められたけど、親の敷いたレールの上を歩きたくは無かったからだ。そこで半ば父への反発心から肉体労働の引っ越し会社に入社した。仕事は正直言って、かなりきつかったけれども遣り甲斐を見出していた……。
「おはようございます」
朝8時。何時もの様に新小岩駅前にある会社に出社してくると早々に会社の先輩が声をかけてきた。
「川口、今日は10時に錦糸町のタワーマンションから新小岩のマンションに引っ越し依頼が入っている。お客は23歳の女性だ。しかも引っ越し先の住所はお前の家の近所じゃないか?」
先輩は顧客情報の書類をひらひらさせている。
「え? 本当ですか? 見せて下さい」
「ああ、いいぜ」
先輩は書類を渡してくれた。早速書類に目を通すと確かに先輩の言う通りだった。
「先輩……近所どころじゃありませんよ。お隣のマンションです」
「へぇ~。凄い偶然だな。しかしタワーマンションから引っ越しか。しかもこのマンションの名義人と依頼主の名前は別々で、自分一人だけ出て行くみたいだ。ひょっとすると同棲相手の男から捨てられでもしたか?」
……先輩の妄想はとどまるところをしらない。半ば呆れた顔で先輩を見ていると、本日一緒に仕事をするもう1人の先輩が現れた。
「何だ? 2人でどんな話をしているんだ?」
「いや、それが聞いてくれよ。今日のお客の事なんだが……」
今度は先輩同士の話が盛り上がり始めた。そんな二人の様子を横目で眺め、作業着であるユニフォームに着がえる為にロッカールームに入り、着がえを始めた。
……依頼主の名前は加藤鈴音。俺と同じ23歳。
クリスマスイブの日に引っ越しなんて、きっと深い事情があるに違いないだろう。
まだ会った事も無い依頼主に俺は早くも興味を抱いていた―ー