本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 2
「よし、それじゃ出発するか」
単身女性の引っ越しと言う事で2tトラックに2人の先輩と同乗し、本日一番最初の依頼主の元へと向かった。
「見事なタワマンだな~」
1つ先輩の野田先輩がマンションを見上げて、目を丸くする。
「ええ、そうですね」
俺は相槌を打った。
「ほら、お前らそろそろ行くぞ。約束の10時まで後わずかだからな」
「「はい」」
ベテラン先輩の氷室先輩が声を掛けてきたので2人で返事をすると、早速俺達はマンションの中へと入って行った。
ピンポーン
氷室先輩が指定された部屋番号のインターホンを鳴らした。
『はーい』
インターホン越しに綺麗な声が聞こえてきた。
「おはようございます、本日引っ越しされる加藤さんはこちらのお宅でよろしいでしょうか?」
氷室先輩の質問に女性が答える。
『はい、そうです。今入口の鍵を解除しますね』
やがて目の前の自動扉が開いた。
「それではこれから伺いますね」
『はい、よろしくお願いします』
「よし。行くぞ、お前ら」
氷室先輩が声を掛け、俺と野田先輩は頷いた。
ピンポーン
指定されたマンションのインターホンを野田先輩が押した。すると、すぐにドアが開かれ、若い女性が姿を現した。女性はほっそりとした身体でパーカーにジーンズ姿で思わず息を飲むほどに可愛らしかった。大きな瞳に白い肌。少しくせのあるフワフワとした肩まで届く柔らかそうな髪……。
「加藤さんでいらっしゃいますね? 本日、引っ越し依頼を受け持つ『ラクラク運送』と申します。どうぞよろしくお願い致します」
氷室先輩が挨拶する。
「お待ちしておりました。本日はよろしくお願い致します」
そして本日の依頼主……加藤さんはニッコリと笑みを浮かべた――
俺達が荷物を運んでいる間、加藤さんは一生懸命部屋の掃除をしていた。自分だけが引っ越しをして、同居人は残る為だろうか? 彼女は真剣な表情で窓ふきをしている。
それにしても何て綺麗な女性なんだろう。部屋の様子から男と暮らしていたのは間違いない。そして肝心の男の姿は見えない。ひょっとすると、いない間に出て行けと言われているのだろうか?
大きな荷物をマンションの外に運び出している時、先輩たちが話をしていた。
「おい、今日の依頼主……物凄い美人だったな」
「ええ。そうですね。でもやっぱり男と暮らしていたのは間違いないですね」
「そうだな。最初は父親と2人暮らしかとも考えてみたが、あれは間違いなく若い男だな。部屋の様子ですぐに分った」
「分れたんスかね……? いや、別れたに決まってますよ。大体イブの日に引っ越しなんてあり得ないでしょう? あ~あ……俺だったらあれ程の美人、絶対に手放さないのにな。後でそれとなく話しかけてみようかな……」
「おい、野田。お前彼女いるだろう? 何ふざけたこと言ってるんだよ」
「はいはい、すみませんでした」
そんな2人の先輩の話を俺は黙って聞いていた。
加藤さん……。
彼女はこれから俺の住む隣のマンションに住むことになる。あのマンションはこの部屋に比べたら、かなり狭いし、あまり使い勝手が良いとは思えなかった。……本当にどんな事情があって引っ越しを……。
「どうした? 川口」
不意に氷室先輩に声をかけられて我に返る。
「いえ、何でもありません」
すると野田先輩が言った。
「川口……お前、ひょっとしてあの女性に一目ぼれしたんじゃないか?」
「え?な、何言ってるんですか?」
今度は氷室先輩が言った。
「そうだな。引っ越しの最中、チラチラ見て気にかけてたしな?」
「そ、そんな事……!」
「だがな、仕事中にナンパはするなよ? そんなことしたらクビにされるかもしれないからな?」
氷室先輩は大まじめに諭してくる。
「当然じゃないですかっ!」
そうだ。俺は絶対に仕事を辞める訳にはいかないのだから。
今は目の前の仕事に集中しよう。
自分にそう、言い聞かせた――
単身女性の引っ越しと言う事で2tトラックに2人の先輩と同乗し、本日一番最初の依頼主の元へと向かった。
「見事なタワマンだな~」
1つ先輩の野田先輩がマンションを見上げて、目を丸くする。
「ええ、そうですね」
俺は相槌を打った。
「ほら、お前らそろそろ行くぞ。約束の10時まで後わずかだからな」
「「はい」」
ベテラン先輩の氷室先輩が声を掛けてきたので2人で返事をすると、早速俺達はマンションの中へと入って行った。
ピンポーン
氷室先輩が指定された部屋番号のインターホンを鳴らした。
『はーい』
インターホン越しに綺麗な声が聞こえてきた。
「おはようございます、本日引っ越しされる加藤さんはこちらのお宅でよろしいでしょうか?」
氷室先輩の質問に女性が答える。
『はい、そうです。今入口の鍵を解除しますね』
やがて目の前の自動扉が開いた。
「それではこれから伺いますね」
『はい、よろしくお願いします』
「よし。行くぞ、お前ら」
氷室先輩が声を掛け、俺と野田先輩は頷いた。
ピンポーン
指定されたマンションのインターホンを野田先輩が押した。すると、すぐにドアが開かれ、若い女性が姿を現した。女性はほっそりとした身体でパーカーにジーンズ姿で思わず息を飲むほどに可愛らしかった。大きな瞳に白い肌。少しくせのあるフワフワとした肩まで届く柔らかそうな髪……。
「加藤さんでいらっしゃいますね? 本日、引っ越し依頼を受け持つ『ラクラク運送』と申します。どうぞよろしくお願い致します」
氷室先輩が挨拶する。
「お待ちしておりました。本日はよろしくお願い致します」
そして本日の依頼主……加藤さんはニッコリと笑みを浮かべた――
俺達が荷物を運んでいる間、加藤さんは一生懸命部屋の掃除をしていた。自分だけが引っ越しをして、同居人は残る為だろうか? 彼女は真剣な表情で窓ふきをしている。
それにしても何て綺麗な女性なんだろう。部屋の様子から男と暮らしていたのは間違いない。そして肝心の男の姿は見えない。ひょっとすると、いない間に出て行けと言われているのだろうか?
大きな荷物をマンションの外に運び出している時、先輩たちが話をしていた。
「おい、今日の依頼主……物凄い美人だったな」
「ええ。そうですね。でもやっぱり男と暮らしていたのは間違いないですね」
「そうだな。最初は父親と2人暮らしかとも考えてみたが、あれは間違いなく若い男だな。部屋の様子ですぐに分った」
「分れたんスかね……? いや、別れたに決まってますよ。大体イブの日に引っ越しなんてあり得ないでしょう? あ~あ……俺だったらあれ程の美人、絶対に手放さないのにな。後でそれとなく話しかけてみようかな……」
「おい、野田。お前彼女いるだろう? 何ふざけたこと言ってるんだよ」
「はいはい、すみませんでした」
そんな2人の先輩の話を俺は黙って聞いていた。
加藤さん……。
彼女はこれから俺の住む隣のマンションに住むことになる。あのマンションはこの部屋に比べたら、かなり狭いし、あまり使い勝手が良いとは思えなかった。……本当にどんな事情があって引っ越しを……。
「どうした? 川口」
不意に氷室先輩に声をかけられて我に返る。
「いえ、何でもありません」
すると野田先輩が言った。
「川口……お前、ひょっとしてあの女性に一目ぼれしたんじゃないか?」
「え?な、何言ってるんですか?」
今度は氷室先輩が言った。
「そうだな。引っ越しの最中、チラチラ見て気にかけてたしな?」
「そ、そんな事……!」
「だがな、仕事中にナンパはするなよ? そんなことしたらクビにされるかもしれないからな?」
氷室先輩は大まじめに諭してくる。
「当然じゃないですかっ!」
そうだ。俺は絶対に仕事を辞める訳にはいかないのだから。
今は目の前の仕事に集中しよう。
自分にそう、言い聞かせた――