嘘も愛して
遅れてやって来た痛みに叫びたくなるほど気がおかしくなる。
なに?
私は恐る恐る激痛がはしる右足首に視線をおとす。
そこには大きな釘が刺さっていた。
よく見ると周りに何個か同じ釘が落ちている。たくさんの釘の一つが刺さり、無数の擦り傷ができていた。
なんで釘……?
私はハッと裏庭に生い茂る低木の影に視線を送った。誰かがこちらを見ていた気がした。
茂みから釘を誰かが投げつけたとしたら……?
この状況に合点が行く。だとしても奇妙で有り得ないことが今起きているけど。
「ははっ!ナイスアシスト!」
しまった、もう一人まだトドメをさしていなかった。男は私に体当たりし、私は右足で踏ん張ることができず、尻もちをついてしまう。
見上げると、男が気持ちの悪い笑みで拳を振り上げていた。
こんなのに負けるとか、死んでもごめんよ。
私は動く左足に力を込め、調子づいた足をなぎ払って体勢を崩してやろうとした、その時。
ガッ!っと、男の首元が歪み、そのまま男は私の視界から消えた。代わりに、長い足が映える。
「よぉ……仁彩」
そこにはハイトーンのベージュ髪に赤メッシュと目尻の赤いシャドウが映える、シュッとした顔立ちの非の打ち所がない王子さまが。
王子さまはいつも余裕な表情で私を見下ろしている。今日だって……。
「おい、なんだそれ」
「え」
すっ…と屈んで、私の右足に手を伸ばす。あの空周がほんの一瞬だけ面を食らったように目を見開いていた。今は眉間に皺を寄せているけど。