嘘も愛して
いるみが聞き耳を立てていた頃、研真は半泣きになりながら一人、お姫様を探していた。
頭の中でいろいろな不安事が駆け巡り、勝手に妄想しては半べそをかく繰り返しだった。
そんな状態でまともに探せる訳もなく、ただ学校中を走り回っていた。
三階の踊り場に勢いで飛び出た研真は、ハッと息をのみ、我に返った。
反対側で待ちに望んでいた姿を漸く捉えた、が、素直に喜べず、硬直してしまう。
状況が飲み込めなかったからだ。
なぜなら、自分が探し求めていたお姫様が、別の男にお姫様抱っこされているからだ。
「んなっ……お、お嬢さん……?」
「おいチビ助。てめぇもいるみ探せ」
空周の口調はいつも通り俺様で、力強さがあった。
だけどその中に少しだけ、焦りが感じられ、少年は吠えることをやめて頷いた。
王子さまの腕の中で大人しく蹲っている、らしくない仁彩の姿に何も言えず、少年は先導しているみを探しにまた走り出した。