嘘も愛して





 一方、嫌々ご主人のお願いごとを遂行するべく動いていたいるみはある教室の前ではたと立ち止まっていた。



 (適当に時間潰して探したけど見つかりませんでしたで通せるでしょう。そろそろ空周のところに戻りますかね〜)



 クルッと踵を返し、元来た帰路に着こうとした、その時だった。


「上手くやってると思うか?あいつら」


「さぁ?別にどうでもいいね。期待してねーし。あいつらも仁彩も、勝手にやってればいい」



 くつくつと汚い笑い声がした教室から、聞き覚えのある名前が上がり、いるみは反射的に動きを止める。



「馬鹿だよなぁあいつら。仁彩ちゃんやったら仲間に入れていいって言葉信じてさ、今頃呼び出して分からせてやってんのかもよー?」


「いい余興だな。くだらねぇ。後で見に行くか」


「興味ないとか言ってたくせに?おいおーい」


「うるさいな」



 ぎゃはぎゃはと笑い合う声を、真顔で受け止めたいるみは黙ってその場を後にした。





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