嘘も愛して




 それから数日後。いつものように学校生活を送る私は、いつものごとく研真と一緒に校内を練り歩いていた。至る所で噂話を聞き、この学校の情勢を察知するのは大事なことだからだ。


「何かいろんなところで空周の名前出るよね」

「当たり前ですよ、うちの空周は生きてるだけで注目の的ですから」


 今日は何故か王様の家来も一緒だ。自分のことのように鼻を高くして満足気にしているいるみさんは、私と研真の後ろをついて歩いている。

 そんな私たちに多種多様な視線が向けられている。好奇、恐怖、憧憬、畏怖、それぞれが私情で私たちをもの珍しげに見ている。


 この場にいないリーダー、絶対的王者の空周はこれ以上に話題が耐えず、常にどこかしらで名前が上がるほどだった。

 空周に魅せられる人は、各々違うものを求めている。空周はそれを全部、持ってる。


「僕また見たいなぁ……!かぁっこよかったよねぇ!ルーキーって喧嘩っぱやくないよなぁ…もっと見たいのにぃ」

 私と肩を並べて軽い足取りの研真は、あらゆる視線など気に留めることなく、揚々と目を輝かせていた。


「空周が下々のために労力を割くなんてありえないですよ、君たちもう少しうちの大将理解してくれません?」

 いるみさんも、気づいてはいるものの重要なことではないと判断してどうでもよさそう。


「大将って……あくまで私は協力者だからね」

「同じくー。あくまで僕はお嬢さんが一番のお気に入りだからねぇ」


 ぎゅっ。途端に研真が私に抱きついてきた。身動きが取れなくなり、私は無理やり引っぺがそうとする。


「ちょっと、硏…!くっつかないで〜」

「なぁんでぇ!愛はしっかり受け取るものだよぉ〜」

「はぁ……呆れてもうどうでもいいです」

 その様子を横目に、頭に手を置き、首を振って立ち去ろうとするいるみさん。

 ちょっとは関心持とうよ!


「ね、君たち」


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