嘘も愛して
「?」
研真がじゃれている中、背中に声がかかった。肩越しに振り返ると、猫目の少年がこちらを静かに見据えていた。見た事のある黒いフードから短い紫髪がチラつく。毛先にかけてピンクよりのラベンダー色が特徴的で、一目で誰か分かった。
序列戦で無双してた人だ。
「御織空周を筆頭にチーム作ったんだって?」
「なんですか、空周に用でも?」
「あぁ。俺も、チームに入れて」
さすが、人を惹きつけるだけある。みんな怖がって声をかけてこなかったのに、一年生が第一人者になるなんて。でも、ご主人様に近づく人は誰彼構わず噛み付く番犬を前にその話は通りづらい。
「ふーん。まぁ本人に聞いてみたらどうですか?うちの空周はそう簡単に人を気に入りませんけどね!」
端正な顔立ちが台無しな悪魔みたいな笑いであしらっている。
パッと、漸く萌え袖天然少年から開放された私はふぅっと息をつく。やっと離れてくれた。
「百道だよね?この前の喧嘩痺れたなぁ……僕研真っていうんだ!よろしくね」
無邪気に百道くんの手を取り、ぶんぶん振り回している。対して百道くんは眉一つ動かさず、
「どうも」
短くきった。無愛想、といえばそれまでだけど、人と関わるのが得意じゃないんだろうな。確かに何を考えているのか分かりづらいかも。
なんて考えていると、ばちっと目が合ってしまう。
「……っ」
めっちゃ見てくる……けど何も言ってこない変な子……。
綺麗な瞳がぱちりと瞬きし、私を通り越した先に目線がいった。背中に伝わる、威圧感。これは……。