嘘も愛して



「上がってきたな」

 空周の余裕のある力強い声色に、立ち上がったみんなが口を揃えて吠える。


「おぉ!やるぞ!」

 頼もしい姿に、私も立ち上がらずにいられなかった。最後に腰を上げた私は、はにかみながら応える。


「みんな……やっちゃおうね」

 清々しいほど気持ちのいい笑顔ができた。


 ほんの少し首を傾け、髪を揺らすと、サァ……っと気持ちのいい夏風が吹き抜ける。太陽の照り着く暑さを吹き飛ばすくらい、心地よく、涼しい風だった。

 私を見止める面々は何故か、目を丸くし、時が止まったかのように無言で私にくぎったけになっていた。


 ん?と首を傾げると、ハッと我に返った研真が一番に反応する。


「いいねぇ!お嬢さんのそういうとこ好き〜」

「力になりたくなるよな、保泉は」


 笑いかけてくれるその温かさに、すっかり表情が軽くなる。あんな、重い話をした後なのに、気持ちがこんなにも澄んでいるなんて。


「あのクソダサクズ野郎は仁彩、あんたを自分のものにしたい気色悪い強欲変態野郎だな」


「もぉ……ほんとに口悪い。私に限らず、自分の思い通りにいかないものに変に執着するんだと思います」


 嫌味っぽく言ってしまった。だけど、事実。

 私は呆れるようにそう、説明した。でも、何故か空周は納得がいっていなかった。



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