嘘も愛して



 堂々と言い放ったはいいけど、ある問題がある。言いづらいなぁ。


 煮え切らない微妙な顔つきに、空周のパッとしない表情にいつもの余裕が浮かぶ。


 もぉ益々言い出しづらい……。


 若干涙ぐんだ眼差しで、意を決して提案を口にする。


「あの、その前に連絡先交換しませんか……」

「なんで」

 間髪入れず、淡々と問いかけてくる。


「え……だって連絡取れなかったらどうやって会うの」

 面白がっているようにも見える王様に、負けないよう対抗するけれど。


「ふっ……そんなに俺に会いたいか、仁愛」

「なっ……!」


 私の抵抗も虚しく、あっさり負けてしまう。


 カマかけられた……悔しい〜!


 ふくれる私を満足そうに見下ろす栗色の瞳。

 そんな、優しい目で私を見ないで……。勘違いしそうになる……。


 受け止めきれなくなり、逃げるように空を見上げた。背中を押してくれるような澄んだ青空。


 夏風が、淡く透き通った私たちの髪をすくうように靡かせる。私は今、前を向いている。


 私を奮い立たせる、最強の王様と何もかもを変えるために。

 好きな人を追いかけてやってきた高校の、二度目の夏休みが始まる。あの頃の自分より成長してやるんだから。


 無事、空周の連絡先をゲットした私は弾んだ胸に手を当て、この新しい日常をかみしめながら帰宅した。




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