嘘も愛して


 
 広々とした暖かな色合いのリビング。朝日と共に生ぬるい風が吹き抜ける。


 白Tシャツに動きやすい短パン姿で伸びをする。

 休みの日のルーティンだ。朝一番にストレッチをして、やる気を出すための準備をする。


 まだ、目は眠くて頭の中は真っ白で、たぶん間抜けな顔をしている。ぐいーっと上体を横にそらす。全身をある程度伸ばしてから一息つく。


 リビング横のキッチンに足を運び、冷たい牛乳をいただく。

 あ〜生き返る〜。

 ひと飲みし、漸く頭が起きる。

 そういえば、夏休みに入り、まだ空周と出かけていない。


 連絡先も交換したというのに、全然やり取りもしていない。私自身、こまめな連絡が苦手で。

 思った通り空周も同じタイプで。何かアクションしないと、夏が終わる……!


 慌てて携帯を取りに二階に続く階段へ駆け出す。と……ピンポーンとチャイムが鳴る。


 朝から誰?

 重い足取りで玄関に向かう。と言っても階段も玄関近くだからその足で行けるんだけど。


 配達か回覧板かな。一応、はーいと小さく返しながら、細くドアを開けた。隠れるように恐る恐る隙間から除く。


 背が高くて誰か分からないけど、男の人だ。知らない人だと判断し、ドアを閉じようと決める。


 適当に誤魔化そう。ママー知らない人が来たよーと、脳内再生する。これで乗り切れる。ドアノブを握る手に力をこめ――――たその時。


 バッと光に照らされる。気づいたらドアノブは手から離れている。

 視界には、背の高い人影が。逆光で表情は分からないけど、どこのどちら様なのかは理解した。


「何シカトしてんだよ」


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