嘘も愛して
ハイトーンのベージュ髪。ウルフカットに胸まで伸びた赤い襟足が雅に揺れる。紛れもない美形王子様がそこには立っていた。
いや、なんで王様が私の家に?!
っていうか!私服だぁ……。
五分袖の黒いTシャツ。右下から左の袖まで龍の刺繍が迸る綿麻生地が爽やかに見える。
少しダボッとしたカーゴパンツにシルバーチェーンが映える。足首上まで覆うハイカットシューズにズボンをインしている。
頭のてっぺんから足の先までまじまじと眺めた。改めて、目尻の赤いラインの端正な顔を見やる。
「お、おはようございます……」
戸惑いつつ様子を伺うと、彼は身を乗り出し、玄関の敷居に踏み入った。
「邪魔するぞ」
「えっ」
ええぇぇえ?
止まる様子のない現状に、慌てふためいてしまい、口が適当に動いてしまう。
「そ、そっち!リビングで待ってて」
玄関入ってすぐ左手に広がる部屋を指さし、突然の訪問者の視線を誘導する。
私は自分のだらしない格好に顔を赤らめ、そそくさと鍵を閉め、二階に上がった。
部屋に入るなり慌ててクローゼットを開けるも、何を着たらと悩み倒し、全く決まらない。
だってだって!今日会う予定もなければ、まさか家に来るなんて思いもしなかったのに。