嘘も愛して
これだけ顔のいい色男、女の一人や二人いたとしても何の驚きもないのだけど。彼が誰かに寄り添う姿がどうも想像できなくて。
「興味ない。女が求めてるものに、なんで俺が応えなきゃいけない、理解に苦しむな」
思った通りの返答に苦笑より、哀れみに似た感情が湧き上がってくる。
「……君は愛を知らないんだね」
口にして、ズキっと胸がしめつけられる痛みがはしった。皮肉に傷ついたのは、言った本人だった。
「くだらねぇ」
空周はその一言で一蹴する。間違いないね。
「そうだね。そんな目に見えないもの、信じれないよ」
グラスに乾いた口をつけ、烏龍茶で潤す。
「俺も信用できないか?」
机の上に肩肘をおいて頬杖をつく王子。妖しく煌めく眼光。試すように鋭くも優しい問いかけ。臆することなく、思ったまま素直に答える。
「……一割。信用してるよ」
「上等だ」
形のいい口をニッとあげる。どんな表情をしても、どの角度から見ても整っていて見惚れる、美しい顔だち。本当に、ずるい。
空周の前だとつられて私も好戦的な態度になってしまう。
不意に、妖しい眼差しが私に絡みつく。なぁ、と小さく零してから視線が交わる。