〜Midnight Eden Sequel〜【Blue Hour】
アップルサンライズの出来上がりを待つ間、彼は前回とは雰囲気の異なる店内を眺める。前回の訪問は開店準備の最中だった。
そのためバーというよりはカフェに近い印象だったが、今の店内はれっきとした酒場だ。しかし従来のバーとは明らかに異なる点もある。
『酒場は照明を暗めにする店が多いのに、ここは他と比べると店内が明るめですよね』
「宮越先生の絵は緻密で繊細な色使いに定評があるんです。店の照明を暗くしてしまうと、先生の素晴らしい色使いがお客様に正しく認識されないでしょう? だから絵の鑑賞の妨げにならないように従来のバーよりも照明は明るくしています」
れっきとした酒場でありながらも、れっきとした画廊でもあるということか。
『ここにあるのは宮越さんの作品だけですか? 堀川さんの絵は?』
壁に等間隔に並ぶ絵画はどれも女性をモチーフにした人物画。モデルの女性の顔や服装、ポーズの違いはあれど、モチーフや画風の統一性は芸術に疎い九条でも一目でわかる。これが現代芸術の巨匠、宮越晃成の絵だ。
九条の問いに、綾菜は苦笑しながらかぶりを振った。
「私の絵なんか飾っても見向きもされません。このギャラリーバーに飾る絵は、宮越先生の絵だから意味があるんですよ。それにここに飾ってある先生の絵は個人の所有物をお借りして展示しています。個人所有になった絵を所有者以外が鑑賞できる機会はそうそう訪れません」
『借りてるって変な言い方ですね。描いた人は宮越さんなのに』
「絵は買われた時点で、買った人の所有物になります。制作者であっても自由にはできなくなるんですよ。でもこの壁列の右から二番目の絵だけは完成したばかりの新作で、まだ誰のものにもなっていません」
右から二番目の絵は港町と思われる景色を描いた風景画だ。人物画が並ぶ中でこの絵だけが風景画であり、他の絵とは毛色が違うようにも見えるが、所詮は素人の感想だろう。
『右から二番目の絵が新作なら、他の絵はいつの頃の?』
「今週は1990年代後半から2000年代前半の作品を展示しています。ちょうど20年くらい前の作品ですね。その時代の宮越先生の作品はほとんどが個人所有になっているので、こうして見られる機会はレアですよ。九条さん、ラッキーでしたね」
右から二番目以外の人物画に九条は既視感があった。芸術とは縁遠い世界で生きてきた彼が、宮越晃成の作品を目にする機会などなかったはずなのに。
いつ、どこで目にした?
そのためバーというよりはカフェに近い印象だったが、今の店内はれっきとした酒場だ。しかし従来のバーとは明らかに異なる点もある。
『酒場は照明を暗めにする店が多いのに、ここは他と比べると店内が明るめですよね』
「宮越先生の絵は緻密で繊細な色使いに定評があるんです。店の照明を暗くしてしまうと、先生の素晴らしい色使いがお客様に正しく認識されないでしょう? だから絵の鑑賞の妨げにならないように従来のバーよりも照明は明るくしています」
れっきとした酒場でありながらも、れっきとした画廊でもあるということか。
『ここにあるのは宮越さんの作品だけですか? 堀川さんの絵は?』
壁に等間隔に並ぶ絵画はどれも女性をモチーフにした人物画。モデルの女性の顔や服装、ポーズの違いはあれど、モチーフや画風の統一性は芸術に疎い九条でも一目でわかる。これが現代芸術の巨匠、宮越晃成の絵だ。
九条の問いに、綾菜は苦笑しながらかぶりを振った。
「私の絵なんか飾っても見向きもされません。このギャラリーバーに飾る絵は、宮越先生の絵だから意味があるんですよ。それにここに飾ってある先生の絵は個人の所有物をお借りして展示しています。個人所有になった絵を所有者以外が鑑賞できる機会はそうそう訪れません」
『借りてるって変な言い方ですね。描いた人は宮越さんなのに』
「絵は買われた時点で、買った人の所有物になります。制作者であっても自由にはできなくなるんですよ。でもこの壁列の右から二番目の絵だけは完成したばかりの新作で、まだ誰のものにもなっていません」
右から二番目の絵は港町と思われる景色を描いた風景画だ。人物画が並ぶ中でこの絵だけが風景画であり、他の絵とは毛色が違うようにも見えるが、所詮は素人の感想だろう。
『右から二番目の絵が新作なら、他の絵はいつの頃の?』
「今週は1990年代後半から2000年代前半の作品を展示しています。ちょうど20年くらい前の作品ですね。その時代の宮越先生の作品はほとんどが個人所有になっているので、こうして見られる機会はレアですよ。九条さん、ラッキーでしたね」
右から二番目以外の人物画に九条は既視感があった。芸術とは縁遠い世界で生きてきた彼が、宮越晃成の作品を目にする機会などなかったはずなのに。
いつ、どこで目にした?