〜Midnight Eden Sequel〜【Blue Hour】
各班の主任が集まる主任会議を終えたばかりの彼女は、南田の隣席にいる九条大河に声をかけた。
「九条くん、また徹夜したでしょう? 残業もほどほどにして帰りなさいって、いつも言ってるのに」
『すみません。ちょっと調べたいことがあって』
「無理しないでよ。でもそれだけ食欲があれば体は平気そうね。ちゃんと仮眠もとりなさい」
カップ焼きそばの容器を空にした後、別班の刑事に分けてもらったフライドポテトに手を伸ばす九条の様子を見た真紀は、呆れたような安堵のような苦笑いを九条に返した。
2年前から南田がバディを組むこの相棒が、今の南田には妻の次に気がかりな存在だった。
警察学校の同期である九条とは昔からそりが合わなかった。体育会系の九条と知能系の南田では、そもそも得意不得意の分野が異なる。
論理的思考に基づいて捜査を進めたい南田には、勘だけで突進していく九条の無鉄砲さが理解できず、何度胃を痛くさせられたことか。
最近、九条は夜な夜な資料室に籠って調べ物をしている。九条が何を調べているか大方の把握はしているが、どうして“それ”を調べているのか、肝心な話はまだ聞けていない。
『じゃ、いってくる。あと頼む』
『ああ』
栄養ドリンクの瓶を片手に捜査一課を出ていく九条を視線だけで見送った。今日の午後は九条とは別行動だ。
ランチタイムを終えたフロアは、それまでのざわつきが嘘のように閑散としていた。慌ただしく昼食を済ませた刑事達は、休む暇もなく仕事の持ち場に戻っていく。
南田も九条に頼まれた調べ物のために資料室に向かおうとした矢先、真紀に呼び止められた。
「本当のところ九条くんは大丈夫なの? 例の女性画家とプライベートで会ったって報告は本人から聞いてるけど」
『あれでも一応はしっかりしています。非番の夜に成り行きで堀川綾菜と渋谷のバーで飲んだらしいですが、店を出てすぐ解散して、別々のタクシーで帰宅したと』
堀川綾菜との一件を九条は南田と真紀に報告している。プライベートな時間にどこで誰と過ごしても、本来は問題がない。
しかし真紀は腑に落ちない表情をしている。
「九条くんの話、そのまま信じられる?」
『九条はあの通りの馬鹿正直者ですから、嘘は上手くありません。タクシーに乗るまでの間に多少は堀川綾菜と何かあったとしても、“解散して帰宅した”の部分は本当だと思いますよ。仮にその画家と九条が俺達に言えない関係になっていたなら、馬鹿正直なアイツの態度はもっと露骨になります』
極論を言えば、事件関係者と一夜を共にしていないなら、堀川綾菜との件は目を瞑るつもりでいた。それは真紀も同じのようだ。
『それと、九条が調べていたことです。九条の字なのでかなり読みにくいですが』
南田が真紀に手渡したノートには、宮越晃成の略歴が九条の字で記されていた。
「九条くん、また徹夜したでしょう? 残業もほどほどにして帰りなさいって、いつも言ってるのに」
『すみません。ちょっと調べたいことがあって』
「無理しないでよ。でもそれだけ食欲があれば体は平気そうね。ちゃんと仮眠もとりなさい」
カップ焼きそばの容器を空にした後、別班の刑事に分けてもらったフライドポテトに手を伸ばす九条の様子を見た真紀は、呆れたような安堵のような苦笑いを九条に返した。
2年前から南田がバディを組むこの相棒が、今の南田には妻の次に気がかりな存在だった。
警察学校の同期である九条とは昔からそりが合わなかった。体育会系の九条と知能系の南田では、そもそも得意不得意の分野が異なる。
論理的思考に基づいて捜査を進めたい南田には、勘だけで突進していく九条の無鉄砲さが理解できず、何度胃を痛くさせられたことか。
最近、九条は夜な夜な資料室に籠って調べ物をしている。九条が何を調べているか大方の把握はしているが、どうして“それ”を調べているのか、肝心な話はまだ聞けていない。
『じゃ、いってくる。あと頼む』
『ああ』
栄養ドリンクの瓶を片手に捜査一課を出ていく九条を視線だけで見送った。今日の午後は九条とは別行動だ。
ランチタイムを終えたフロアは、それまでのざわつきが嘘のように閑散としていた。慌ただしく昼食を済ませた刑事達は、休む暇もなく仕事の持ち場に戻っていく。
南田も九条に頼まれた調べ物のために資料室に向かおうとした矢先、真紀に呼び止められた。
「本当のところ九条くんは大丈夫なの? 例の女性画家とプライベートで会ったって報告は本人から聞いてるけど」
『あれでも一応はしっかりしています。非番の夜に成り行きで堀川綾菜と渋谷のバーで飲んだらしいですが、店を出てすぐ解散して、別々のタクシーで帰宅したと』
堀川綾菜との一件を九条は南田と真紀に報告している。プライベートな時間にどこで誰と過ごしても、本来は問題がない。
しかし真紀は腑に落ちない表情をしている。
「九条くんの話、そのまま信じられる?」
『九条はあの通りの馬鹿正直者ですから、嘘は上手くありません。タクシーに乗るまでの間に多少は堀川綾菜と何かあったとしても、“解散して帰宅した”の部分は本当だと思いますよ。仮にその画家と九条が俺達に言えない関係になっていたなら、馬鹿正直なアイツの態度はもっと露骨になります』
極論を言えば、事件関係者と一夜を共にしていないなら、堀川綾菜との件は目を瞑るつもりでいた。それは真紀も同じのようだ。
『それと、九条が調べていたことです。九条の字なのでかなり読みにくいですが』
南田が真紀に手渡したノートには、宮越晃成の略歴が九条の字で記されていた。