〜Midnight Eden Sequel〜【Blue Hour】
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2001年4月 宮越、スペインに移住。以降はスペインを拠点に活動。

2014年4月 堀川綾菜、関東芸術大学美術学科に入学
同年夏 宮越、スペインから帰国
※帰国後の宮越は人物画は描かず、静物画や風景画を好むようになった。

2015年4月 宮越、母校でもある関東芸術大学美術学科で講師を務める。堀川綾菜の担当講師に。

2018年 宮越、脳梗塞を発症。
啓徳大学病院にて手術。

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「2001年4月……。九条くんが引っかかっていることって、そういうこと?」
『そういうこと……かもしれません。アイツは二階堂の事件よりも、20年前のドラゴンフライが気になっているようです』
「なるほどねぇ。確かに20年前の事件との因果関係は調べる必要がある。今日の外出もこの件と関係があるのね」

 壁際のホワイトボードには各人の予定が書き込まれている。九条のスペースには〈14時、啓徳大病院〉とあった。

『啓徳大病院は二階堂の解剖を担当した病院ですが、宮越の脳梗塞の手術をした病院でもあります』
「さぁて、あの暴れ馬は何を見つけてくるかな」

 ノートを南田に返した彼女は視線をデスクに落とした。その先には、堀川綾菜を含めた事件関係者の顔写真が散らばっている。

「九条くんが動揺するのも無理ないね。びっくりするほどよく似ている。一課長も驚いていたもの」
『だけど似ていても堀川綾菜と“彼女”は別人ですから』
「そうね。どんなに似ていても違う人。九条くんがそれをわかっているなら、私達が口を挟む問題ではないでしょうね」

 九条の心配をしているのは南田だけではない。上司の真紀も、3年前の一部始終を知る上野一課長や同僚達も最近の九条の心情を慮《おもんぱか》っている。

「最初はどうなるかと思ったけど、九条くんのバディを南田くんにして正解だったみたい。暴れ馬の手綱、しっかり握っていてね」
『残念ながら俺に乗馬の経験はありませんので、暴れ馬を乗りこなせるかどうか』

 3年前、絶望と空虚を背負った九条の背中を目にしたあの日も。
九条のバディに指名されたあの日も。
ここまで来れば腐れ縁だと腹を括ったあの日も。

九条の絶望と空虚を共に背負い続けた2年間を過ごした今でも、南田は九条にとっての“相棒”は自分ではないと思っている。

(きっとアイツは周りの気遣いもわかっているんだろうけど。馬鹿はバカでも、そこまで馬鹿じゃない。……アホではあるが)

 互いにわかっているから何も言わない。これを相手への信頼と呼ぶには癪《しゃく》に障るが、結局はその言葉がしっくりきてしまう自分自身に、南田は小さな溜息を溢した。
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