ハイスペ上司の好きなひと


そう思って見上げるも、飛鳥の表情は何を考えているのかいまいち掴めない。


「勿論それは分かってる。けど彼女は今日復帰したばかりだ」
「はい。そうですね?」
「時短だし、短い時間で仕事を進めないといけない分忙しい」
「…?はい」
「だから…なんだ、あまり藤宮さんにばかりに頼りすぎないようにな」
「……」


なんとなくだが、言いたいことが見えてきた。

たぶん今日、質問があったところを藤宮に聞いてそれをきっかけに話が盛り上がってしまった事を言っているのだろう。

特に他意はなく隣に居たから尋ねただけなのだが、これが所謂嫉妬というやつなのか。

新人の立場を利用して彼女に話しかけようとするなんて、的な?

まあそれは言い過ぎだとしても、飛鳥にしてみればやっと戻ってきてくれた想い人だ。

自分以外の人間と親しげに話していれば面白くないのも当然だ。

思いの外飛鳥も嫉妬深いんだなと思うと、なんとも言えない胸の痛みが走った。


「分かりました。今後は気を付けますね」


そう言い、お風呂の準備してきますと言ってドアを閉めた。

再び抱いてしまいそうになる邪な気持ちを押し殺し、衣類ケースの中から部屋着を取り出して入浴のための準備を進めた。

そこで初めて手のひらに爪の跡が残るほど拳を握りしめていた事に気付いた。


「…はは、馬鹿みたい…」


どれだけ想ったところで無駄なのに、それでもまだ諦められないなんて本当に、馬鹿みたいな話だ。

もう何年かぶりに流した涙は酷く温かく、そして引き裂かれる程に痛かった。




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