ハイスペ上司の好きなひと
「…っ」
その美しさたるや、思わず目を瞑りそうになってしまった。
これはまずいと視線を手元に落とせば、飛鳥が腕時計を確認しながら「もう昼か」と呟いた。
「古賀さん、昼は?」
「あ…持ってきていないので適当に外で買おうかと思ってます」
「ならせっかくだから一緒に飯行こう」
そう言って立ち上がるので、驚いて声をかけた。
「私とですか!?」
「そのつもりだが、先約があったか?」
「いえ…けど飛鳥主任は帰国したばかりですし、同期の方と一緒に行かれるのかと」
「あいつらとは夜に約束してる」
「あ、そうだったんですね…」
想定外だ。
中途入社の自分は同期がおらず基本ぼっち飯だ。
別に邪険にされているわけでも無いし時々は誘ってもらえるのでそれに対して特に何かを思った事はない。
だというのに、まさかの一緒に行く相手が飛鳥だなんて食事を楽しむどころか緊張で味などしないのではないか。
けれど断る理由もないので次の瞬間には「ではぜひ…」と口にしており、飛鳥が異動する前によく行っていたという定食屋に赴く事になった。