ハイスペ上司の好きなひと



少し奥まった場所にあるその店は穴場なのか会社の人間は1人も見当たらない。

しかも提供が異様に速い。

だから味は如何なものかと思ったのに、頼んだ唐揚げ定食はサクサクでジューシーで間違いなく美味だった。


「美味しいですね…」


思ったままを口にすればら飛鳥は「だろ?」と微笑んだ。


「料理が来るのも早いですし何より美味しいし、人気がありそうなのにうちの会社の人は誰も居ないんですね」


見渡しながらそう言えば、飛鳥の箸を持つ手がピタリと止まった。


「会社の奴には…他に1人しか教えてないから」
「?そうなんですね」


その人と来なくて良かったのだろうかと思いつつも、それ以上詮索する事はなかった。

少しだけ陰りの見えた表情が気にはなったが、それを聞けるような間柄ではない。

紫は結局それを見なかった事にし、残りの唐揚げにうっとりと舌鼓をうった。




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