ハイスペ上司の好きなひと
「安心して。古賀さんの悪いようにはしないから」
「……」
その怒気を含んだ笑顔に初めて藤宮に対して恐怖を抱いた。
あの優しさを絵に描いたような藤宮が怒っている、それだけで七瀬が何をしたのかあらかた想像がついてしまってそれ以上は踏み込めなかった。
「それと飛鳥くんの事だけど…」
飛鳥という名前に反応してしまい、それに何かを感じ取ったのだろう、言葉を濁した藤宮の先を遮るように紫は割って入った。
「藤宮さん。私、飛鳥さんにフラれちゃいました」
努めて明るく振る舞ったつもりだが、それを聞いた藤宮の顔はみるみる青くなってしまった。
「あ、いいんです!元々望みが無いって分かってて好きになった私が悪いので」
「……」
「えっと…だからもう気持ちは切り替えてて、今度婚活を始めてみようと思ってるんです!」
「婚活…?」
動揺を隠しけれていない藤宮に笑顔で「はい!」と返す。
「実は一昨日兄の結婚式があって参加してきたんですけど、幸せそうで良いな〜って思って、それで…」
半分は嘘だ。
本当はあまりに退屈すぎて欠伸をしていたけれど、気持ちを切り替えようと思っているのは事実なのでそれはこの際いいだろう。
藤宮がどこまで応接室での話を聞いたかは知らないが、正直もうこの話は蒸し返したくはない。