ハイスペ上司の好きなひと
翌日、せっかくこっちに来たのだから観光をして帰るという母に付き添い、結果もう一泊することになった母親の見送りがあったので月曜は午前休を申請し、午後からの出社にした紫は昼過ぎに会社へ向かった。
金曜日に七瀬に恥をかかせた分、誰かしらに責められるかもしれないなと思いながら重い気持ちでIDカードを通してフロアに向かえば、まだ昼休みで人はまばらだった。
近くのデスクの人に小声で挨拶をして席につけば、間も無くして寄ってきた人物に声をかけられた。
「古賀さん、少しだけいいかな?」
話しかけてきたのは藤宮だった。
もちろん返事は了である。
藤宮の後について行き空いていた会議室に入れば、対面一番に頭を下げられた。
「古賀さん、ごめんなさい」
「え!?ど、どうして藤宮さんが謝るんです?」
「七瀬さんの事で…」
七瀬、あの女がどうかしたのか。
そう思って眉を寄せれば少しだけいつもより気を張り詰めた藤宮が真顔で言ってきた。
「応接室での事聞いたよ。古賀さんに荷を背負わせ過ぎたよね、ごめんなさい」
「あ…彼女、何か言ってました?」
あの女のことだ、ある事ない事言いふらしていそうだなと思ってはいたが、藤宮が否定も肯定もしないところからそうなんだろうなと思った。