ハイスペ上司の好きなひと



「2人は仕事どうよ?紫ちゃんはワーホリ行ってたんだって?」
「そう。今は商社にお世話になってるよ。真由菜はずっとバリキャリだよね」
「そうね」
「銀行の融資課だっけ?大変そうだな」
「うん…それなりに…」


言葉を濁す真由菜の体を肘で突き、いつもの勢いはどうしたと喝を送る。


「えっと、竹内くんはテレビ局のADだっけ」
「そう!最近やっと下っ端抜け出した感じだな!」
「下積み長いって言うもんね。…佐倉くんは…大阪の広告会社、だったよね。やっぱり大変?」
「そこそこ。クライアントから無茶な要望出された時なんかは泊まり込む事も多いな」
「そっか…泊まり込みはキツいね…」


真由菜の態度に思わず頭を抱えそうになり、対面に座る竹内と目を合わせて困ったように笑った。

真由菜の気持ちを知っている上に、自分は一応奏斗の元彼女だ。

この状況において竹内だけが紫にとって頼みの綱であり、事前に連絡は取っていていざという時の助け舟をお願いしていた。

ADという職業柄もあるのだろう、巧みに話を振っては徐々に場の空気を温めてくれ、紫もそれに便乗しながら無理矢理テンションを上げた。

間も無くしてドリンクと料理が届き、アルコールのおかげもあってぎこちない雰囲気が和らげば、自然と話題は恋愛方面にシフトしていった。



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