ハイスペ上司の好きなひと
多分意識を失っていたのは半刻程だと思う。
真由菜達の話し声で目が覚め、むくりと体を起こした。
「紫、起きた?大丈夫?」
「うん…」
返事はするもののボーッとしており目の焦点があっておらず、真由菜達はこれはダメだと互いに顔を合わせた。
「どうしよう、時間的にもうラストオーダーだけど…これ1人で帰らせられないよね」
「真由菜はコイツの家知らねえの?」
「紫、最近引越したのよ。私も新しい家は知らなくて…」
会話を聞きながらこれはダメな流れだと思った。
せっかく真由菜が長年の恋を実らせようとしているのだ。
奏斗がわざわざ遠方からこっちに来ているのだから、この機会を逃せば次会えるのはいつになるか分からない。
この後2人で二次会に行かせるくらいの気が回せなくて何が友人だ。
そう思って何とか気張り、真由菜の袖を引く。
「大丈夫…わたし、かえれるから。真由菜は2次会いきなよ」
「そんな事言ったってフラフラじゃない。住所言える?他に家知ってる知り合い居ないの?」
「しりあい…?」