ハイスペ上司の好きなひと
同じくらい紫も自分を好いていてくれていると思う。
思い思われる事がどれほど幸せな事であるか、全て紫が教えてくれた。
最早彼女は自分にとって無くてはならない存在だ。
だからこうして、安息地であるはずの自宅より先に紫に会いに向かっているのだから。
比較的小さなキャリーケースを転がしながら紫の自宅マンションへと到着し、インターホンで彼女の部屋の番号を押して呼び出した。
数コール鳴った後、聞こえてきた愛しい声に勝手に顔が綻んだ。
『えっ、航くん!?あれ、出張って明日までじゃなかったっけ?』
この1年で変わった呼び名は彼女の心の距離がぐんと近くなったようで好きだった。
ドアホン越しに驚いた姿を想像すれば自然と笑みが溢れてくる。
「早く終わったから便を早めて帰ってきた」
『そうなんだ!あー…えっと、どうしようかな…とりあえず上がってきて!』
「?」
紫の物言いが少し気にはなったが、エントランスが開錠されたので中に入り足を進める。
彼女の部屋は3階で、本当はもっと上の階に住んで欲しかったがこればかりはどうしようもない。
もう少し待てば同じ家に住めるのだ、それまでは我慢しよう。
そんな事を考えているうちに部屋の前に到着し、ドアホンを鳴らす。