ハイスペ上司の好きなひと


男は何やら大きな荷物を持ちあげると、こちらに愉快そうな視線を向けてくる。


「あんたそんなにキレーな顔してんのに、こんな女でいいの?大して可愛くもないただの凶暴な女よ?」


紫を知ったような物言いにピクリと眉が寄る。

馴れ馴れしい態度に加え、人の彼女の家に我が物顔で居座るその様にいい加減我慢の限界がこようとしていた。

一体お前は誰なんだと詰め寄ろうとしたところ、それより先に紫が手を上げ非常にいい音を立てて男の頭を叩いた。


「偉っそうに言うな!あんたより歳上なんだから敬語を使え敬語を!」
「ってぇ!テメー兄の頭を躊躇いもなく殴りやがって…年々母さんに似てくんな」
「兄なら兄らしい振る舞いをしろ!」


ベー!っと舌を突き出し、紫は自分を部屋に引き入れ代わりに炎慈と呼んだ男を追い出した。

彼女らしくない子供っぽい振る舞いに拍子抜けしてしまい、手に持っていた荷物をボトリと落としてしまった。


「兄…?」
「ああ!航くんごめんね!礼儀のなってない男で…コレ、一応一番上の兄なの」
「どーもぉ。馬鹿妹のお兄様の炎慈です」


確かに言われてみれば、目元の辺りがどことなく似ているような気がする。

そしていつもは大人びていながらも可愛らしい紫の子供のような振る舞いを見るに、兄妹と言われればひどく納得がいく。

常日頃紫から聞く兄の人物像とも一致していた。

そう思うと先程までの怒りはどこへやら、飛鳥は外行きの笑顔を作ってみせた。



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