ハイスペ上司の好きなひと
「初めまして。紫さんとお付き合いさせていただいている飛鳥航輝です」
「あ、はい。こちらこそ」
畏まった挨拶をすれば、炎慈と名乗った紫の兄もつられて頭を下げてきた。
「いやー…見れば見るほど男前だな。てか紫お前、この人と居たらなんか霞んで見えるな」
「うるさいなあ。分かったから早く帰ってよ」
「わーっとるわ。じゃあ飛鳥さん、機会があればまた」
「はい」
紫さえ絡まなければ炎慈はきっと常識的な男なのだろう。
それだけ妹を構いたくて仕方ないように見える。
紫は欠片も思っていないようだが、あれはあれで兄として妹が可愛くて仕方ないのだろう。
ひらひらと手を振り去っていく炎慈の背中に二度とくるなと悪態をつき、紫はいつもの表情に戻した。
「うるさくしてごめんね航くん。出張お疲れ様」
そう言いながら惜しげもなくドアを閉め、紫自身は本気で兄にうんざりしている事が伺えた。
「お兄さんが来てたんだな」
「そう。母が珍しく仕送りを送ってきたんだけど、送料ケチって兄の分まで入れてきたから仕方なく」
本当は兄の妻に来て欲しかったらしいのだが、現在妊娠中のため荷物を持たせるわけにもいかず兄本人が来てげんなりしたとのこと。
紫はおそらく母が送ってきたであろう荷物に手を入れながら「ご丁寧に蒼慈の分もあるし…やだなあ」と次兄らしき名前を呟きながら文句を言っていた。