ハイスペ上司の好きなひと


そしてその週の金曜の夜。

直属の上司の秋山の出張により定時に上がった紫は、ひと足先に自宅へ戻り家事と料理を作り終え航輝の帰宅を待っていた。

帰宅が少し遅くなると連絡は事前に受けてはいたが先程最寄駅に着いたとメッセージが入り、少しの時間ができたためフィカスの手入れをしていた。

柔らかな布で葉についた埃を数枚取ったところでガチャリと玄関の鍵の開く音が耳に届く。

紫は迷わず布巾を置き、廊下に出て恋人を出迎える。


「航くん、おかえりなさい」

「ただいま、紫」


初めは照れてしまったこのやり取りも、1週間経ち少しだけ慣れてきた。とはいえ、航輝への想いが小さくなったわけではないので若干のこそばゆさは否めない。

靴を脱いでスリッパを履いた航輝は流れるように紫を抱き締める。返すように手を背に回せば、つむじにキスを落とされた。


「1週間お疲れ様」

「紫もな。…あー…明日からはずっと一緒に過ごせる」

「同棲したのにまだ足りない?」

「当たり前だろ。ずっとこうしてたい」


スウ、と息を吸われ紫は少し固まる。まだお風呂も入って居ないのにと若干の文句を思っていると、航輝が尋ねてきた。

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