ハイスペ上司の好きなひと
「プロポーズの場所も色々考えたが、俺達の始まりはここだったから伝えるならここしか無いって思った」
始まりの場所。そう言われて出会った頃を思い出す。
家に帰れなくなり、航輝からの提案で居候を始め、気持ちが通じ合った場所もこの家だった。
そんな大切な思い出の詰まったこの場所で告げてくれた事が、とても嬉しかった。
「紫…俺の気持ち、受け取ってくれるか」
どこか震えた声で言う航輝に、紫の心など決まっていた。
「…っ、もちろんだよ…!」
——ああ、また。
ほろりと落ちる涙。涙腺は緩くない方だったのに、この人には泣かされてばかりだ。
それも、こんなに嬉しい涙を。
「嬉しい。航くん…ありがとう」
一筋の涙を伝わせ破顔する紫に、航輝の顔がこれでもかと和らぐ。そして視線を落として指輪を取ると、紫の左手を取り薬指にはめた。
紫はそれを掲げ、婚約の事実を噛み締める。
左手を顔の前に寄せながら「似合うかな?」と聞けば、「世界一」と即答が返された。
そのまま引き寄せられるように2人の唇は重なり、静かな部屋に余裕の無い息遣いが漏れる。