ハイスペ上司の好きなひと



「飛鳥さん、私この後一度自宅の様子を見てきます」
「ああ分かった。1人で大丈夫か?」
「あれから数ヶ月経ってますし、今まで何も無かったので平気です」


今は飛鳥の優しい気遣いですら胸が痛い。

そんな胸の内を隠しながら笑みを貼り付けてそう言い、飛鳥の返事を聞いて洗面所へ向かった。

その後簡単に身支度を整えて勇み足で家を後にした。


途中ドラッグストアで掃除道具を購入して本来の自宅へ入ると、日曜の朝だからだろうか、ありがたいことに部屋の中は静寂に包まれていた。

最近は週一で様子を見に来ても物音は聞こえるものの以前のような怒鳴り声は聞こえてこなくなっており、流石にあのお騒がせカップルも別れたのだろうと安心していた。

けれど時折女性の声は聞こえてくるので男性の方は相変わらずなのだろう。

少し悪そうな風貌だが顔の造りは整っていたので、いつの時代もああいったタイプは人気があるのだなと至極どうでも良いことを考えた。



< 63 / 244 >

この作品をシェア

pagetop