ハイスペ上司の好きなひと


その後タクシーに乗せられ飛鳥の自宅まで着くと、特に何を言われるでもなく部屋に入った。


「温かいものでも飲もう。緑茶でいいか?」
「あ、ありがとうございます」


座って待っていろと言われ素直にソファーに腰を下ろした。

その頃になると動悸は落ち着いていて、安堵感から座ると同時に長いため息を吐くとケトルに水を入れていた飛鳥が何を思ったのか寄ってきた。


「気分悪いか?大丈夫か」
「え、あ、はい。平気です」
「…無理するな。顔色悪いぞ」


そう言って不意に顔を覗き込まれ思わず身じろいだ。

突然のイケメンのドアップは心臓に悪いんだってば。


「ほ、本当です。だいぶ落ち着きましたから」
「…そうか?」
「それよりすみません。体調悪いのに迎えにきていただいて」
「……。はあ…」


何故か飛鳥は頭を痛そうに押さえ深く息を吐く。

そして苦い顔のままこちらに目を向けた。


「俺より古賀の方が深刻だろ…」
「えと…まあ…二度と経験したくはない出来事でしたけど…生半可なメンタルじゃ海外生活はできませんでしたし、本当に大丈夫です」
「ここは日本だ。古賀、分かってるとは思うがあの家にはもう戻るなよ」
「え?でも…」
「どうしてもの用事の時は俺も行く。今日みたいな事がまたあったらこっちの心臓がもたねえ」
「……わ、分かりました…」



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