ハイスペ上司の好きなひと


「古賀!」


目が合うなり駆け寄り、飛鳥は紫の肩に両手を置いた。


「なかなか帰らないし連絡もつかないから気になって来てみれば…これはなんだ。何があった?」
「あ、えと…」


未だ冷静さを取り戻せていない頭ではどこからどう説明していいか分からずしどろもどろしていると、見かねた女性警官が私から説明しますと申し出てくれた。

話が進むに連れ眉間に深く皺が刻み込まれる飛鳥には申し訳なさしか湧かなかった。

一通りの説明を終えると、飛鳥は難しい顔のまま警官に尋ねた。


「彼女はもう連れて帰ってもいいですか?」
「構いませんよ。もしかしたら今後お話を聞かせてもらう事があるかも知れませんが」
「それでしたらその時は私に連絡をください」


そう言って飛鳥は名刺を取り出して警官に渡した。


「彼女は非常にショックを受けているでしょうし、私が同席します」
「えっと…失礼ですが貴方は古賀さんの恋人か何かですか?」
「上司です。彼女の実家が遠いのもあって身元引受人のようなものです」
「はあ…成る程」


自分だけ置いてけぼりで進められている目の前の会話をただ黙って聞いているしか出来ず、口を挟む間もなく女性警官は納得してしまった。

間も無くして「では連れて帰ります」と言った飛鳥に腕を引かれ、紫はトラウマ製造機である自宅を後にした。




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