ハイスペ上司の好きなひと
飛鳥の言う意味はよく分からないが、困ったような物言いの割には嬉しそうにも見えた。
「食事持ってきてくれたんだろう?何から何までごめんな」
「あ、いえ…私が勝手にやってる事ですから…」
盆を床に置き、お椀とレンゲを手に取って渡した。
「生姜も入れてあるので温まると思います」
とにかく沢山汗をかいて熱を下げましょうと続けて言ってみたが、耳に届いているかわからなかった。
飛鳥は手渡したお粥を見下ろしたままそれを黙って眺めている。
「…飛鳥さん?もしかして生姜苦手でした?」
ほかに何か食べられないものでも入っていたかと思ったが飛鳥は静かに首を横に振り、レンゲで掬いひと口食べた。
「…美味い」
その一言でスッと肩の荷が降りた。
出来るだけ胃に負担がかからないよう薄味に努めたが、それが彼の口に合うかやはり感想を聞くまではドキドキしていた。
飛鳥が問題無く食べ進めるのを確認し、紫は満足な気持ちでお盆を手に取った。
「では食べ終わる頃に器を下げにきますので、ゆっくり食べてくださいね」
そのまま床に手をついて立ちあがろうとしたのだが、名前を呼ばれた止められた。