ハイスペ上司の好きなひと


そんな事を考えながら溶き卵を加え、いい具合に固まったところで鍋からお椀に移し替えた。

それとスポドリを盆に乗せて部屋のドアを叩けば間も無くして返事が返ってきたので、中に入ると同じ服だが着替えたらしい飛鳥がベッドに座って経済誌を読んでいた。


「飛鳥さん、食事持ってきましたけど…まさかお仕事ですか?」


そう声をかけながら近寄ると、飛鳥は雑誌を傍に置きながら苦笑した。


「仕事じゃないからそんな顔するな」
「えっ、私、変な顔してました?」
「ちょっと怒ったような顔してた」


そんなつもりはなかったんだけどな、と思いながらもそう言われるとつい気になってしまい眉を触ってみる。

けれど鏡を見てみない事には自分の顔はやっぱり分からない。

その様子を見て飛鳥は困った顔から表情を変え、穏やかに笑いながら口元に手を当てた。


「まさか俺が後輩から心配される日が来るとはな」
「どういう意味ですか?」
「いや…ついこの間まで俺が口出す立場だったのにと思って」
「?」



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