彩度beige
土曜日に「スピカ」に出勤するのは月に1回か2回なのだけど、いつも夕方の時間は忙しく、少しとはいえ残業することがほとんどだ。

けれど、今日はほんの少しの残業もなく、16時ぴったりに仕事が終わった。

緋山くんと話をする、その覚悟は決めたはずだけど・・・、待ち合わせに向かう足取りは、やっぱり重たくなっていく。

一葉くんへの私の気持ちは、話すことになるだろう。

それに・・・、好意を告げられるかもしれない。

高校時代、その予感はドキドキと胸が高鳴るものだったけど・・・。

今の私は、それに応えることはできない。





「おー、おつかれ」

「うん。ごめんね・・・、お待たせして」

駅前のチェーン店のコーヒーショップ。

レジで受け取ったホットカフェラテのカップを手に持って、緋山くんの向かい側の席に腰をおろした。

いつも混んでいることが多いけど、今日はいくつか空席があり、少しめずらしい光景だった。

「・・・このソファ席に座れるの久しぶりかも。いつもだいたい埋まっているから」

「あー、そうだな。今日はタイミングがよかったんだよ。席探してる時、ちょうどここが空いたから」

「そうなんだ」

「それはラッキーだね」と言いながら、私はカフェラテのカップに口をつけ、ゆっくり手首を傾けた。

しゅわっとした、ミルクの泡が口の中へと広がっていく。

カフェラテの、このひと口目の感覚が私はとても好きだった。

「・・・でさ」

ひと息つくと、緋山くんはすぐに本題に入ろうとする様子を見せた。

私は「うん」と何事もないように頷きながら、心の中は、緊張感でいっぱいだった。

「・・・・・・、あー、もう、単刀直入に言うわ。また好きになった。水谷、俺と付き合って」

「!」

本当に、単刀直入すぎて私はとても驚いた。

だけど、緋山くんらしいとも思う。

昔、恋人だった人。今だって、別に、嫌いだというわけじゃない。

その相手から言われた言葉に、心が全く動かないわけではないけれどーーー・・・。
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