彩度beige
「水谷が一葉さんを好きになる気持ちはわかるし、俺も、女だったら絶対好きになりそうだけど。まあ・・・、憧れどまりかな。水谷にも、合わない気がするけどね」

「・・・・・・」

「合わない」と、言葉にされて、胸にずきっと痛みが走る。

それは、ただの「違い」なんだと思う。

良い悪いで判断するものではなくて、合う合わない、ただ、それだけのことなのだけど。

一緒にいる基準としては、それはとてもーーー、重要なことだと思った。

「水谷の前の旦那も経営者で金持ちだっただろ。なんで別れたかとか、詳しいことは知らないけどさ。水谷には・・・、もっと普通の男が合うと思うよ」

そう言うと、緋山くんは私のことをじっと見つめた。

複雑な気持ちになって目を逸らすと、緋山くんは少し決まりが悪そうに言葉を付け足す。

「・・・要するに、俺がいいんじゃない?って言ってるんだけど」

「・・・、それは・・・」

「あー・・・、だからって、今すぐ答えてほしいわけじゃないからな。少しぐらいは考えてみてほしいというか。ゆっくりでいいし、待ってるし」

「・・・・・・」

心が揺れる。

いろんな角度に。

過去や未来に。

瀧澤さんに言われた言葉。緋山くんに言われた言葉。

自分の気持ち。一葉くんの未来を想う。

一緒にいて、私が幸せだって思える人は。私といて、幸せを感じてくれるのは。

2人でずっと、幸せを感じていられる人はーーー・・・。

未来なんて私は視れないし、正しい答えはわからない。

だけど、それでもなにかを選択し、答えを出さなきゃいけないんだと、それだけは、今の私にも唯一わかることだった。








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