彩度beige
(・・・・・・)


戸惑いながらも、一生懸命な彼の様子に微笑ましさを感じる気持ち。

ちょっとかわいく見えてしまったり。

と、同時に・・・、複雑な気持ちがこみ上げる。


(・・・一葉くんは、やっぱりこういう存在なんだよね・・・)


「Vulpecula」の社長であって支配人。容姿も良くて、優しくて、周りに人が集まってくる。

みんなをグイグイ引っ張っていくタイプのトップではないかもしれないし、一葉くん自身、隠れていたいタイプなのかもしれないけれど。

それでも、こうして外に出ていけば、周りに人が集まってくる。

そしてそのその光景は・・・、とても自然で、当たり前のように目に映る。

「・・・・・・」

ーーー眩しいな、と思う。

一葉くんはそこに存在するだけで、光みたいに、周りに影響を与える人だ。

生まれた時から、沢山のものを持っていて。そこに知識や経験が積み重なって、今の一葉くんができている。

唯一無二で、やっぱり・・・、一葉くんは神様から特別に選ばれたような存在で、私とは、違う世界にいる人だと思った。


(・・・・・・、そんなこと、もちろんわかっていたけれど・・・)


「・・・・・・」

改めて、その光景を目の当たりにして、実感せずにはいられなかった。

一度、大きく息を吸う。

それをゆっくり吐き出して、私は心を落ち着けた。

そして、なるべく邪魔にならないように・・・、フロントの中に向かって挨拶をする。

「すみません、私もそろそろ失礼します。また明日来ますので・・・、よろしくお願いします」

「あ、はーい!お疲れさまでした〜!」

何人かの声が重なる。

私はペコリと頭を下げると、くるっとすぐに後ろを向いて、そのまま前へと歩き出す。

「・・・・・・」


(・・・うん。こういう感じでいけばいい・・・)


一葉くんとは、こうやって、少しずつでも距離を取っていかなくちゃ。

これ以上、好きになったりしないよう。

だけど、できるだけそれはさり気なく。あからさまとか、失礼にはならないように。

少しずつ、少しずつ・・・。

そんな器用なことが、私にできるかわからないけどーーー・・・。

「・・・っ、水谷さん」

エントランスを出て、数十メートル歩いたところで、引き止めるように後ろから腕を掴まれた。

驚いて後ろを振り向くと、急いで走ってきたのだろう、少し息を切らした一葉くんと目が合った。

「・・・、一葉くん・・・」

「・・・っ、ごめん。咄嗟に・・・」
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