彩度beige
翌日は、雲ひとつない晴天で、気持ちのいい青空が広がっていた。

今日はエントランスホールの展示を変えるということで、それを任された私と棚橋さんは、朝から忙しく動き回っていた。

「棚橋さん、これ、やっぱり奥に置いた方がいいでしょうか」

「うーん・・・、そうね。その方がバランスいいかもしれないですね」

事前に考えていた配置の通りに作品を棚へと並べていって、ひと呼吸おいて遠くで眺め、微調整を加えてく。

緋山くんにつくってもらった花瓶と芳江さん作のガラス製の器とお花はそのまま活かし、新たに依頼した作家さんたちの作品を加えて展示空間を彩っていく。


(・・・、これ、何度見てもかわいいなあ・・・)


「ミモザ」という作家さんがつくってくれた、お花と猫の日本刺繍が施されているコースター。

とても繊細な作品は、実際手に取り、触れて、見れば見るほど、ものすごい技術の詰まったものだと心の底から実感してくる。

このコースターは、デザインがよく見えるように額縁に入れて立てて置き、もう一枚、縁取りに刺繍をあしらったコースターは、上にガラス製のお花をお行儀よく一輪置いて。

その後ろにいくつかのオブジェと花瓶、キャンドルと、小さなランプを配置する。

今回は、前回よりも全体的に洋風の要素を多めにしている。

キラキラとした冬の感じが伝わればいいなと思う。

「・・・よしっ。こんなものかな」

棚橋さんが満足そうに頷いて、私も横で頷いた。

通りがかった女性従業員たちが、「かわいい!」と声を上げているのを耳にして、私と棚橋さんは、笑顔でもう一度頷き合った。

・・・一葉くんも、後で見てくれるかな。

「かわいい」とか「いいね」って、思ってくれたらすごく嬉しい。

「今日は水谷さんのお友達もここを見に来るんでしたっけ?」

「はい。3階のカフェに行くから、その時展示も見るよって」

一葉くんとの出会いのきっかけをつくってくれた真美である。

本当なら、客室に泊まってゆっくりじっくり企画を堪能したかったそうだけど、お値段的に悩むところだし、そもそも予約がいっぱいで、いずれにしても宿泊はできないということだった。


(偶然、松澤さんと休みが重なったっていうことで、一緒に来てくれるみたいなんだよね)


一葉くんのお兄さんの友人であり、一葉くんを弟のようにかわいがっている松澤さん。

松澤さんも、真美と一緒に私と一葉くんを繋げてくれた人。

・・・そっか。あれからもう、半年以上・・・、もうすぐ1年くらい経つんだな。

なんだかすごく懐かしい。

あの出会いがなかったら、私は今、ここにはいないんだって思うと、とても不思議で、様々な気持ちがこみ上げる。
< 115 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop