彩度beige
それに・・・、以前より、華やかさが増している。そのことに、私の心はズキリと痛んだ。


(・・・やっぱり、敦也にはこういう女性が合っていたんだ・・・)


それは、決してがっかりしたというわけではなくて、「そうだよね」って、納得をする感覚だった。

敦也のようないわゆるセレブの男性は、美波さんのような女性を選んで、その女性をさらに華やかに、輝かせることができるんだ。

それがきっと、当然の流れなんだろう。

けれど私は、ずっと「普通」のままだった。

敦也の求める妻にはなれず、ずっと普通で、「恥ずかしい」とまで言われてしまってーーー・・・。

やっぱり私は経営者とか、セレブだと言われる男性とは釣り合いがとれない存在なのだと、改めて・・・何度目かの納得をした。

そしてまた、似たような立場である一葉くんを、どうしても敦也と重ねてしまう。

一葉くんは優しいし、もし、付き合ったとしても、私の存在を恥ずかしいなんて言わないだろうし、思わないでいてくれる気がするけれど。周囲の人には・・・、「なんであの彼女?」って、言われてしまうんだと思う。

恥ずかしいとか見る目がないとか・・・、そんな評価で、一葉くんに恥をかかせるわけにはいかない。

敦也の時も、自分なりに頑張って合わせていたつもりだけれど、私はきっと、どうしたって、性質的にずっと「普通」なんだと思う。


(・・・うん。そうだ。やっぱり、一葉くんとはこのまま距離をとっていくのが正解だ・・・)


ずっと迷っていたけれど。

今はつらいかもしれないけれど。

それでも未来を想うなら、私はこのまま、一葉くんから離れていくのが正解だ。

きっといつか、「離れてよかった」って、思える日が来るはずだから。

だから今はーーー・・・。

「あー、ちょっとちょっと!もう少しライトこっち側から当ててくれない?そこだと多分、映り悪いと思うから」

その時、美波さんの声が耳に入った。

私はハッとなって意識を戻し、声の方へと目を向ける。

「あー、違う!そうじゃなくてもう少し上っ」

「・・・こうですか?」

「違う!もうっ、下手だなあ・・・。この位置からこうやってライト当てるのよ」

美波さんは、照明を持っている男性に身振り手振りで説明していた。

男性は、少し面倒くさそうに頭を掻いて、照明の位置を調整している。


(・・・大変そうだな。というか・・・)


やっぱり、配信用の動画撮影をしようとしている感じに見える。

美波さんはインフルエンサーだし、そうしたら、きっと商用の撮影だよね・・・。

「・・・ね、あの女の子、見たことある気がするんだけれど、やっぱり商用の撮影じゃない?許可もらっているかもしれないけれど・・・、なんかホテルの雰囲気と合っていないし、一応確認取ってこようか」

「そうですね・・・」

「あ、私聞いてくるからちょっと待ってて」

そう言うと、棚橋さんはフロントに向かって歩き出す。

私は「お願いします」と声をかけ、再び美波さんに目を向けた。
< 118 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop