彩度beige
敦也にとって、自分より下だ、と思う相手から馬鹿にされるということは、なにより不快で許せないこと。

もちろん、一葉くんは馬鹿にしているわけではないし、ただ、事実を言っているだけなのだけどーーー・・・。

「・・・なあ、聞いてんのかよっ」

「はい。ただ、私が責任者になりますので、これ以上の説明は」

「・・・っ、このっ、いつまでも馬鹿にやがって・・・っ!」

敦也の怒りは、頂点に達したようだった。

顔を真っ赤にし、一葉くんの胸倉をグッと掴んだ。

「・・・!ちょっ・・・!!」

このままでは、一葉くんが殴られてしまうかもしれない。

さすがにこれは・・・!と、止めに入ろうとしたーーー・・・、その時だった。

「おーい!ストップストップー。秋田さーん、そこまでにしよう」

穏やかな、けれど、とても力強い声だった。

声の方へと目をやると、松澤さんがこちらに向かってゆっくりと歩いてくる姿が見えた。

松澤さんの少し後ろには、厳しい顔をして敦也を見つめる真美もいる。

「もう少し玲央の対応を見ていたいところだったんだけど・・・、さすがにこの状況を見てるだけってわけにもいかないからなあ」

言いながら、松澤さんは敦也の元まで歩み寄り、敦也の手を掴んで一葉くんから引き離す。

敦也は目を見開いて、「どうして・・・」と、松澤さんに向かって呟いた。

「いや、僕も友人とそこの展示を見に来たところなんですよ。けど、作品のひとつは壊れてしまったようですね・・・」

そう言って、松澤さんは残念そうにガラスの破片に目を向けた。

そして、ふうっと息を吐いた後、一葉くんの肩に手を添えて、敦也の方へと向き直る。

「この彼は、本当にここの社長で支配人なんですよ。一葉玲央って言いまして・・・、『Vulpecula』の創業者の孫で、現会長の息子です。秋田さん、何度か会ったことがある気もするんだけど・・・」

松澤さんの言葉を聞いて、敦也の顔は青くなっていく。

けれどもう、簡単には引き下がれないようだった。

「・・・っ、な、なんだ、なるほど親のコネですか。それで、支配人でもそんな髪でチャラついてても許されるっていうわけだ」

そう言うと、敦也は顔を引きつらせつつも、勝ち誇ったような態度を見せた。

一葉くんは一瞬顔を曇らせたけど、すぐに表情を切り替える。

「・・・それは、仰る通りです」

「だよな!親がすごいだけの奴って、そもそもが甘えてるんだよな。その年でこんなホテルの社長で支配人をしてるとか・・・、実力と立場が見合ってないし、努力と覚悟が足りねーよ」

「・・・・・・」
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