彩度beige
言ってやったとばっかりに、フフン、と、敦也は得意気だった。

一葉くんは唇をぐっと結んだ後に、真っ直ぐに、敦也の顔をじっと見た。

「・・・何も反論できません。本当に、その通りだとしか言いようがないですが・・・・・・、今、覚悟だけはできました」

「ふーん?」

にやにやと、挑戦的な態度の敦也。

一葉くんは息を吐き、意を決したような顔で言う。

「作品に対する弁償は、していただかなくて結構です。ただ、他のお客様のご迷惑になりますので・・・、今すぐに、ここからお帰りください」

反論は、一切受け付けないという言い方だった。

敦也は「え」と呟いて、ポカンとなった顔をする。

「そして、うちのホテルのご利用は、今後一切ご遠慮ください。宿泊はもちろん、レストラン等のご利用も、全てお断りさせていただきます」

「・・・・・・。は、はあ・・・っ!?」

まさか、といった表情で、敦也は一葉くんの顔を見る。

一葉くんは、顔色を変えずに頭を下げた。

「ふざけんな!『Vulpecula』の出禁とか、そんなの体裁悪いだろ!!」

「・・・申し訳ありません」

「経営者グループの集まりで会場になることだってあるんだぞ!」

「・・・、申し訳ありません」

「・・・っ」

話は平行線だった。

美波さんは戸惑っている。

「ちょっ、それって敦也だけよね?私は別にいいんでしょ?」

「・・・いえ。申し訳ありませんが・・・、お客様も同様です」

「は、はあっ・・・!?」

美波さんが憤慨し、敦也は顔を真っ赤にしている。

「・・・いいか?今日は食事と撮影だけだったけど、普段は最上階のスイートに泊まったりとかしてんだぞ?こっちは上客!これからだって、オレらのことを拒否したら、トータルで何千万って売り上げを捨てることにもなるんだぞ!」

「・・・構いません。他のお客様のご迷惑になることは避けたいですし、大切な作品を守るためなら、その方が」

「なっ・・・!?」

敦也と美波さんは、信じられない、といった顔をする。

けれど、これ以上は何を言っても無理だと感じたのだろう、2人揃って唇を噛む。

「・・・信じらんねえ。こっちが全部悪いみたいに言いやがって。・・・最低なホテルだな」

「ほんとよ・・・。私、このことSNSで言うからね。勝手に罪をなすりつけられた、迷惑がられたんだって。それで出禁にされたって。私のフォロワー、どのくらいいるのか知っている?私がSNSで発信したら、たとえ『Vulpecula』でも、すぐに潰れてなくなっちゃうわよ」

敦也と美波さんの最後の言葉に、一葉くんは何も言わずに頭を下げた。

敦也は舌打ちをして、美波さんを連れて去っていく。

美波さんの撮影スタッフの男性たちは、急いで機材をまとめると、一葉くんや周囲の人たちにペコペコ頭を下げながら、敦也たちの後を追っていった。
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