彩度beige
「・・・」

「・・・・・・」

途端、その場が一気に静かになった。

かなり気を張っていたのだろう、一葉くんは目を閉じて、「はー」と大きく息を吐く。

「はは、お疲れ」

松澤さんが、一葉くんの背中を労うようにポンと叩いた。

一葉くんは松澤さんに目を向けて、ぺこりと小さく頭を下げた。

「・・・さすがに言い過ぎた気がします」

「あー、いや、大丈夫でしょ。あそこまで言わないと伝わらなかった気もするし・・・。秋田さん、最近会社の業績悪いらしいから、本当に弁償するって流れになってたら、かなり苦しかったんじゃないかなあ」

「・・・そうなんですか?」

「うん。美波さんの手前、虚勢張らずにいられなかったんだろうけど・・・。弁償しなくていい、被害者ヅラできるっていうのは、秋田さん的には逆によかった気がするし」

「・・・、そうですか・・・・・・」

一葉くんは目を伏せて、考えるような顔をした。

私は、おずおずと声をかけてみる。

「あの・・・、申し訳ありません。私が出しゃばってしまったばっかりに・・・」

コウタくんを無事にご両親に引き渡した後、私も、あの場を黙って去って、棚橋さんや、ホテルスタッフの到着や指示を待つべきだったかもしれない。

あの時は、去るべきじゃないと思ったけれど・・・、こうなってしまった今、後悔や反省がこみ上げる。

「水谷さん・・・」

「ああっ!ごめんね水谷さん!!私の確認が遅かったから・・・」

一葉くんの後ろから、棚橋さんが慌てた様子で顔を出す。

そして両手を合わせ、「ごめん」のポーズを私に向けた。

「今日ね、他にも色々あったみたいで・・・、社員さんがなかなか捕まらなかったんだ。それで確認に時間がかかって、なかなか戻ってこれなくて・・・」

「一人にしちゃってごめんね」と、棚橋さんは頭を下げた。

私は、ぶるぶると大きく首を横に振る。

「・・・棚橋さんも水谷さんも、2人とも何も悪くないよ。全部、オレの責任です」

「大変な思いをさせて申し訳ない」と言って、一葉くんは私と棚橋さんに頭を下げた。

私と棚橋さんは恐縮し、揃って首を横に振る。

「ま、ひとまずはいい感じで終わったんだしいいんじゃないかな」

「ははは」と笑う松澤さん。

一葉くんは、「いい感じ・・・」と悩ましそうな顔をしたけれど、松澤さんは変わらずに、「そうそう」と笑顔で頷いた。

さすが、いくつも会社を営んでいる経営者・・・。肝が据わっているというか、立場的に、こういうことに慣れているのかもしれない。
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