彩度beige
(でも・・・)


「・・・SNSの件は大丈夫でしょうか。美波さん、かなり怒っていたから・・・」

本人も言っていた通り、美波さんはかなり影響力のあるインフルエンサー。

「このことをSNSで言う」と言っていたから、「Vulpecula」への影響を思うととても不安になった。

「ああ・・・、それは大丈夫。さすがにノーダメージってことはないだろうけど・・・、向こうの出方次第で、こちらも必要な対応はとっていくから」

私の不安に、一葉くんは落ち着いた様子で答えを返す。

「だな」と、松澤さんも同意する。

「『Vulpecula』には優秀な弁護士さんがついているからね。それにSNSのゴタゴタは、玲央のオタク仲間に頼めばいい感じに流れを変えてくれるんじゃない?みんなスキルすごいし、頭いいでしょ」

「・・・オタク仲間って・・・。友達を巻き込むつもりはないですよ。とりあえず正攻法で対処して、ダメだったらまた考えます」

「はは、相変わらず真面目だなー。ま、こんな感じで玲央も大丈夫だって言ってるし、僕も僕で動くから。水谷さんは何も心配しなくて平気です」

そういうと、松澤さんは私に向かってにこりと笑った。

松澤さんに言われると、説得力と安心感がある。

後ろでは、真美もうんうん、と、励ますように頷いてくれている。

「・・・・・・」


(・・・そうだよね・・・。私が心配したところで、この事態をどうこうできるわけではないし・・・)


ああ言ってくれているのだし、きっと、策は色々あるのだろう。大丈夫。あとはもう、一葉くんと松澤さんを信じよう。

私は、2人に小さく頭を下げた。

「・・・はい!ではみなさーん、そろそろ通常業務に戻りましょうかー」

突然、響き渡るような声がして、振り向くと、瀧澤さんが立っていた。

いつの間に・・・と思いつつ、ここまでのやり取りがひと段落するのを見守って、待っていてくれたようだった。

気がつけば、他のホテルスタッフたちも周囲に集まっていて、皆それぞれ、心配そうな表情だった。

「先ほどの件はもう収まったみたいですからね。みなさんはそれぞれ持ち場に戻ってくださいね。松澤さんも・・・、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。どうもありがとうございました・・・」

瀧澤さんは周囲にいたホテルスタッフに声を掛けた後、松澤さんに深々と頭を下げた。

松澤さんは、「いやいや」と恐縮したような顔をする。

「大したことはしてないですから」

「いえ。本当に、いつも迷惑ばかりかけてしまって・・・。後はこちらで対処しますので、どうもありがとうございました・・・」


(・・・瀧澤さんと松澤さん、2人は知り合いだったんだ・・・)


それも、深く長い付き合いがありそうな。

一体どういう関係なのだろう・・・と、考える。
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