彩度beige
「・・・そうだわ。残念だけど、作品も片付けないといけないわね・・・」

松澤さんと真美の後ろ姿を見送った後、瀧澤さんは壊れてしまったガラスのお花に目を向けた。

改めて、私もそちらに目を向ける。

本当に、残念でたまらないけれど・・・、お客様が怪我をしてもいけないし、このままここに置いておくわけにはいかない。

「・・・私、片付けておきます」

そう言って、私は前に進み出た。

企画に合わせ、芳江さんが作ってくれた作品だ。これ以上壊れないように保管して、報告や謝罪もしなければ。

最後まで、責任をもっていたいと思った。

「・・・、そう・・・。じゃあ、申し訳ないけれどお願いするわね」

「はい」

頷いて、私はすぐにその場を後にした。

片付けのための道具を借りに行き、急いで展示棚の前へと戻っていくと、一葉くんと棚橋さんがその場に残り、破片を軽くまとめてくれていた。

その破片の中には、美波さんたちが使っていた照明の割れた部分もあるようだった。

「すみません、あとやります!」

「大きいのまとめてただけだから。大丈夫」

「破片は結構飛び散りますからね・・・、細かいのは拾えていないけど」

「いえ・・・、ありがとうございます。危ないし、お二人とも他の仕事がありますよね。道具を借りてきましたし、私はもう仕事は残っていないので。後はお任せください」

棚橋さんは、ちらりと腕時計に目を向けた。

夕方から別の場所で仕事があると言っていたから、移動時間もかかるはず。

「・・・そうか、こんな時間になるもんね。じゃあ・・・、あとはお願いしようかな」

「はい。大丈夫です!ありがとうございました」

頭を下げると、棚橋さんは頷いて、一葉くんに挨拶をしてその場を去った。

一葉くんはちょうど及河さんから呼び出しがあり、短い会話をした後に、「わかりました」と返事した。

「・・・申し訳ない。オレも他の仕事に戻るけど」

「うん、大丈夫。破片が残っていないかは、最後に清掃員さんにもきちんとチェックしてもらうから」

お任せあれ、というように、ポンと私が胸をたたくと、一葉くんは微笑んだ。

こんな時でも、こういう彼の表情に、私はドキリとしてしまう。

「・・・水谷さん」

「ん?」

「その作業が終わったら、社長室まで来てくれるかな」


(え?)


「・・・、社長室・・・?」

「うん。場所がわからなかったらフロントスタッフに聞いてもらえたら」

「・・・・・・、わかりました・・・・・・」


(社長室って、一葉くんの部屋だよね・・・?)


一瞬、今回の件で個人的に注意を受けるのかなと思ったけれど、これまでの彼の様子から、そういうことではなさそうだ。

だとすると・・・、一体どういう用事だろうか。

社長室にわざわざ呼ぶなんてーーー。

正直、ちょっと不安な気持ち。

なんだろう・・・と考えながら、私は、残ったガラス片を拾い集めた。







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