彩度beige
「・・・でも、私が今日誕生日だってよくわかったね・・・」

私の好みに関しては、ほとんど把握しているようだけど。

誕生日は、どうして今日だとわかったのだろう。

自分ですら忘れていたのに・・・と首を傾げると、一葉くんはクスリと笑った。

「初めて取材した時に教えてもらったよ。覚えてない?」

「・・・・・・」

言われて私は記憶を辿る。

そういえば、あの時は、私の基本情報のほぼ全てを伝えたような覚えがあった。

そうだ・・・、年齢を言って驚かれ、同い年だという話をし、お互い、誕生日はいつだという会話をしたと思い出す。

「家族でパーティーはしないって言ってたから、今日誘ったんだけど。大丈夫だったかな」

「あっ、うん。それは大丈夫。近々ケーキを食べたりするとは思うけど・・・、みんなでパーティー、みたいなことをするのは学生時代までだったかな。今はもう、弟も家を出ているし」

離婚して実家に戻った後、初めて迎えた誕生日には、父が「久々に盛大にやろうか!」なんて言い出したけど・・・、なんとなく悲しいような、むなしいような感覚がして、やめてほしいと私が頼み、結局ケーキを食べるだけの行事になっている。

「・・・そういえば、一葉くんの誕生日は来月だったかな。日にちはえっと・・・」

まだ、出会ったばかりの頃にした会話。

「私が一ヶ月年上だ」なんて話をした覚えがあるから、一葉くんの誕生日は来月で、中旬頃だった気はするけれど・・・、はっきりとした日付は覚えていなかった。

「14日だよ。来月って覚えててくれたんだ」

「うん。でも・・・、日付はごめんなさい」

「全然。普通忘れるでしょ。来月って覚えててくれただけで十分だ」

言いながら、一葉くんは静かに笑った。

私の胸は、痛むような、それでいて高鳴るような、そんな複雑な気持ちを感じていた。

「・・・・・・」

ーーーどうして。

どうしてそんなふうに言ってくれるのだろう。どうしてそんなふうに感じてくれるのだろうか。

私はちゃんと覚えていなかったのに。

なのにどうしてーーー・・・。

「・・・そうしたら、一葉くんの誕生日も何かお祝いするね。ほしいものとか何かある?」

せめて、私が彼に返せるものを。

あまりにも高価なものを言われた場合はちょっと悩んでしまうけど。こんなに素敵な誕生日をプレゼントしてもらったのだ。

できる限りのものは私も贈りたいと思った。

「うーん・・・、これといっては特にないかな。・・・ああ、けど、水谷さんと一日一緒にいたいかも」

「・・・っ、えっ!」

彼の言葉に、胸が大きく跳ね上がる。

誕生日、私と一日一緒にいたい・・・?

想定外の言葉を投げられて、私は驚き、上手く言葉が返せない。
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